最近の鎮痛剤事情
痛みをとる方法にはいろいろありますが、鎮痛剤を用いることが少なくありません。しかし鎮痛剤は胃を壊すなど副作用が有名で印象が悪い薬剤です。しかし鎮痛剤の種類も方法もだいぶ進歩してきました。現在の一般的な鎮痛剤に対する社会的な認識はかなり間違っているような気がします。
胃にやさしい頭痛薬というのが市販されていますが、この表現は不正確なものだと思います。最近の研究では頭痛薬として一般的な成分でも、整形外科で用いる鎮痛剤とあまり変わらない程度に胃潰瘍を形成する可能性があることがわかってきました。脳梗塞や心筋梗塞後に小児用の解熱鎮痛剤を継続的に用いることがありますが、この薬剤でも胃などを痛める可能性があるのです。整形外科からの鎮痛剤は嫌という患者さんも循環器内科からの処方は全く気にしない方が多いですがやはり心理的な要因も少なくないような気がします。
一方最近開発されてきた選択的な消炎鎮痛剤は以前から用いられているものと比べるとかなり胃への負担は減っています。胃薬と併用しなくてもよいという報告もあるくらいです。市販されている薬より最新の医療用薬の方が体にはやさしいかもしれません。もちろん長期に内服しない方がよいに決まっていますが、飲んだり飲まなかったりするより短期間きちんと飲んだ方がよい場合も少なくありません。
疼痛にもいろいろあります。外傷等で痛んだところに生じる痛み、障害部位周辺での神経への刺激で神経痛を生じてしまうもの、疼痛の感覚が脳へ到達して脳で疼痛回路といったものが形成されて痛みを感覚として記憶されてしまっているような状態などがあります。最近は脳での疼痛回路を緩和するような薬剤投与も積極的に活用されるようになってきています。癌性疼痛に対する麻薬の使用もその一つです。
むち打ち症で疼痛が軽快しない症例や、複合性局所疼痛症候群、線維筋痛症という特殊な疾患では、脳の活動を調節する薬剤が有効である場合があることが分かっています。薬剤としては抗うつ剤に分類されるので処方する際に患者さんには抵抗感があると思いますが研究上有効性が示されており、経過により使用してみるべき薬剤ではないかと思います。
痛みというのは眠れなくなったり体を動かしづらくなったりして日常生活に大きな支障を生じるつらい症状です。なんとか軽快するようにさまざまな手を検討するべきではないでしょうか。鎮痛剤は怖いという先入観は必要ですが過大であってはいけないと思います。
といっても使わないに越したことはないのですが。
« 肩関節脱臼 | トップページ | 6月はリウマチ月間です。 »
コメント