破傷風
犬に噛まれると狂犬病の心配をする方がいます。現在は日本国内の犬であれば狂犬病の心配はありません。一方、破傷風は今でもどこにでもいる菌です。日本の土壌を検査すると半分くらいの割合で胞子が存在するという報告もあります。
外傷や咬み傷から感染するのが一般的ですが、かすり傷や明らかな外傷がない場合もあります。感染してから3日から3週間くらいで症状が出現します。なので傷が完全に治ってしばらくしてから発症することもあります。最初は口が開きにくいとか言葉が発しにくいなどの症状が生じます。そのうちに全身の筋肉がけいれんを起こしたり呼吸ができなくなったりします。治療は人工呼吸や筋弛緩剤の投与など集中治療室での全身管理が主体となります。一度発症すると非常に重篤で死亡することも少なくない大変危険な疾患なので、とにかく予防することが重要です。
現在でも国内で年に100人くらい発症しています。私の医師としての経験でも1例しか診たことはありませんので、頻度としては稀で心配しすぎる必要はありません。
日本では子供の時に予防接種をしていることが一般的です。この定期予防接種後10年は免疫があります。それ以降に外傷を生じた時は基本的に追加免疫をすることが推奨されています。咬み傷、切創、挫創、裂創、あらゆる創で破傷風トキソイドの予防接種をお勧めします。ただ、主には屋外で受傷した場合です。この5年以内に追加接種を受けていない、アウトドアなどをよくしている40歳以上の方では予防接種を受けておいた方がよいかもしれません。海外旅行へ行く方で予防接種を希望される方も時々います。渡航先での必要性について検討されるとよいと思います。
小さな傷でも破傷風の予防接種をすることに不信感を抱く方もいるとは思いますが、一度でも実際の症状を診たことがある立場から言わせていただくと、本当に予防接種は大切だと思います。
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