腱鞘巨細胞腫
手の指に皮下腫瘤を生じると、一般的にはガングリオンだろうと言われることが多いです。ガングリオンというのは、関節や腱鞘から風船のように袋を生じその中に水やゼリーのようなものが溜まる疾患です。関節から生じて大きくなると、水泡のように皮膚が薄くなり破れることもあります。そうなると感染の危険もあるため注射器で抜いたり、手術的に切除することもあります。切除する時には、袋が関節まで繋がっているため関節包の一部も一緒に切除します。
以前にガングリオンだろうと言われたけれどどうかということで当院を受診された方の中にはガングリオンではないことも少なくありません。同じような他の腫瘤としてはアテロームがあります。これは皮膚側から袋が内部へできてしまい、そこに老廃物のようなものが溜まってしまう疾患です。時に化膿して赤く腫れて破れることがあります。破れると臭い内容が出てきたりします。アテロームも根治的には切除することになりますが、腫れたりしなければ経過観察でもよいかもしれません。
その他の疾患で心配されるのはやはり腫瘍です。手の指に悪性腫瘍を生じることは極めて稀です。注意するべき良性腫瘍の一つに巨細胞腫というものがあります。腱鞘などから生じる腫瘍で、ガングリオンより形がいびつだったり多房性だったりします。アテロームよりは皮膚の下にある印象です。ガングリオンかと思って注射器で抜こうとしても抜けなくて違うと気づかれたりすることもあります。巨細胞腫は小さいうちに切除することが基本です。大きくなると血管や神経を巻き込むようになったりして切除が困難となることもあります。手術に際しても、手術でしっかり切除されても局所再発することもあり注意が必要です。
皮膚の直下にある腫瘍はやはりエコーで見た方がよいかもしれません。少なくともガングリオンと巨細胞腫は触診ではわかりづらくてもエコーで見れば違うことがわかります。穿刺すべき腫瘤か、切除すべき腫瘤か。初期判断には大変有効な検査です。
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