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2015年6月 7日 (日)

整形外科の手術は嫌?

整形外科は脊椎、関節、筋肉や神経、骨などいわゆる運動器を扱う診療科です。骨腫瘍なども診療しますが多くの場合生命に直接関係するような疾患ではありません。
例えば腰部脊柱管狭窄症や膝の変形性関節症では歩けなくなってきたり痛みやしびれなどの症状が強くなってくると手術をお勧めすることが少なくありません。ただ基本的には癌や心血管疾患などのように手術をしないと死亡する可能性が高い場合とは違って患者さんにしっかりした希望がなければ強くは話を進められない面があります。
手術は絶対に嫌という方は少なくありません。内服薬や注射やリハビリなど様々な治療を行っても改善せず、手術によって十中八九改善するであろう状態でも手術を選択しない方は少なくありません。
70歳台までの比較的若い方では、手術は怖いとか、友人で手術をした人が経過が良くないからしない方が良いと言っていると話されることが多いように思います。そういう場合、膝関節などであればご本人が日常生活動作を何とか行えているようであれば手術をしないという選択肢もアリだと思います。脊柱管狭窄症などの神経疾患では神経障害が進行してしまうと回復も思わしく無くなっていく旨はお話しするようにしています。それでも手術を回避して経過をみるのかどうかよく相談していく必要があります。もちろん麻痺を生じているような重症な方には強く手術をお勧めします。
80歳頃の方では、もう歳だから手術はしたくないと言う方が多いです。最近の手術は心臓などに大病がなければ80歳頃の手術はほとんど問題ありません。この年頃の方には、このまま手術をしないで経過をみてもし本当に歩けなくなっても後悔しませんか?とお聞きすることもあります。手術をすれば90%以上の確率で日常生活動作を自立していけそうな方で手術しなければ早晩歩行困難になりそうな方でも手術はリスクがあるから絶対に嫌と言われますと、誰も手術を強制することはできません。
そのような方がその後どうなるかと言うと、85歳くらいになって本当に歩けなくなってくるとどうにかして欲しいと言われることが少なくありません。さすがに85歳になって手術をするのは心身的にリスクが高いと思います。しかし最近はそれでも全身的に大きな合併症がなければ手術を行うことは可能です。ただやはり余病が出てきて手術ができなくなっている方も少なくありません。そうするともう車椅子の使用や介護サービスの利用などによって対応していくしかなくなります。また、術後回復すると言ってもドンドン歩けるようになる訳ではありません。
最近は手術は怖いから介護で掃除などをしてもらえればそれで良いと言う方も増えているように思います。85歳を超えているような方であればそれでも良いように思いますが、65歳とか70歳の方に言われるとどうなのかなと思わざるを得ません。もちろん手術はリスクを伴いますので個々人でどうするか決めるしかないとは思いますが、手術をして自立した生活を維持するという選択肢をとらず、この先20年30年とヘルパーさんの援助を受けていくという選択をされる方が増えてきたら社会保障が成り立つのだろうかという不安を覚えます。
脊椎の手術や人工関節の手術を自分で行って患者さんの回復具合を診てきた整形外科医だからこう考えてしまうのかもしれません。介護申請した時に、介護職の方に手術を勧められることもあるのでしょうか?ケアマネージャーさんには動きにくい方がいたらヘルパーさんを入れて介護リハを入れて訪問マッサージを入れてとサービスを増やしていくことを考える前に、もしかしたら手術によって自立した人になるかもしれないという発想も少し持っていただけるとよいのかなと思います。

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