深部静脈血栓症がごく普通に
深部静脈血栓症というのは、四肢末梢から心臓に帰る方の血管である静脈が血の塊で詰まってしまう疾患です。その塊が肺にまで流れて肺の血管が詰まってしまうと肺塞栓症と言い、命に関わることがあります。20年くらい前私がまだ駆け出しの医師だった頃、人工関節術後の方に深部静脈塞栓症からの肺塞栓症を生じた時には人工関節の専門医である上司が術後の肺塞栓症は初めてと話されていたことをよく覚えています。当時は欧米では報告されていましたが日本人には稀と考えられていました。
それから20年、日本人の生活習慣の欧米化や検査機器の向上により日本人でも深部静脈血栓症はそれほど稀ではないことが分かってきました。今では深部静脈血栓症の方が普通に一般の診療所にも受診される時代になったのだなと最近時々思います。当院で深部静脈血栓症と診断した方では肺塞栓を併発している方も少なくありません。もちろん重症の方は救急搬送されるわけですが、息切れやなんとなく息苦しいという位の症状の方は歩いて診療所へ来院されます。
片方の足が急に浮腫んだらとりあえずなるべく早めに医療機関を受診した方がよいと思います。他に考えられる疾患としては菌による皮下の腫れである蜂窩織炎やリンパ系の病気などがありますが、蜂窩織炎の場合は赤く腫れるのが普通で、リンパ系の病気では通常徐々に浮腫んできます。静脈血栓では膝の裏や下腿の背側がやや痛い方が多い印象ですが、急に浮腫んで左右の下肢の径が違うという状態になります。
最近は新しい薬も使用できるようになり治療も進んでいます。早めに診断できれば順調に治っていきますがしばらく内服の継続は必要です。やはりメタボの方に多い印象があり、生活習慣の改善も必要かと思います。