膝関節内側の痛みで
中高年の方の膝関節の内側の痛みとしては変形性膝関節症が圧倒的に多いのですが、たまに膝関節内側のやや後方が痛いという方がいます。この場合、膝を屈曲させる半腱様筋と半膜様筋という2つの筋肉が腱となって膝内側後方を通り鵞足に付くのですが、この腱の損傷や炎症が原因になっていることがあります。診察上、圧痛点をよく確認すると関節面でも関節裂隙でもなく、内側のやや後方に最も押して痛い部位があります。膝関節のやや下にある鵞足と言われる部位にもやや痛みがある場合もあります。腫れていることもありますが、ほとんど腫れていないことの方が多く、しっかり圧痛点を確認しないと普通の変形性膝関節症と診断してしまう可能性が高いです。
腱とその周囲の問題なのでレントゲンでは明らかな異常はありません。ただ、石灰沈着性の炎症の場合は白い塊が見えることがあります。超音波検査で腱の不整や周囲の炎症所見が見られます。石灰とは別の結晶様のものが存在することもあり尿酸を含めて何らかの結晶性疾患の場合もあります(通常穿刺吸引や切除は行わないため確定診断は困難ですが)。
腱の損傷であれば固定や安静を指示しますが、炎症性疾患のことが多く、腱周囲にステロイドの注射をするとよく効きます。注射するほどでもない軽症の場合は内服や湿布で炎症を抑えて経過観察します。
頻度としては少ないですが、膝の内側が痛いイコール変形性膝関節症ではないということは覚えておくとよいかもしれません。
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