特発性腰椎硬膜外脂肪腫症
腰部脊柱管狭窄症の方は非常にたくさんいます。典型的な症状としては歩いていると足が痛くなってきたり重くなってきて立ち止まってしまう「間欠は行」が有名です。その他には坐骨神経痛や、足の裏のしびれや皮が一枚貼っているような感じ、歩いていると前かがみになってしまうことなどがあります。
腰椎の骨に囲まれた脊柱管という部分で、前方から椎間板が突出したり、後方から黄色靭帯が厚くなったり、腰椎が前後にズレるすべり症などで通り道が狭くなることが原因であることが多いです。
稀な原因として、脊柱管内の脂肪層が大きくなってしまうことがあります。脊柱管の中に神経の通る管があるのですが、その周囲には通常薄い脂肪層があります。これが非常に増えてしまうと神経を圧迫してしまい狭窄症の症状を呈することがあります。この疾患を硬膜外脂肪腫症と言います。ステロイドの使用やクッシング症候群という内分泌疾患に伴って起こる事もありますが、そのような原因のないものを特発性硬膜外脂肪腫症と言います。脂肪腫といいますが、腫瘍ではなく、あくまで脂肪組織の増殖です。
この場合、レントゲンでは脂肪は映らないため診断できません。腰椎のMRIにて確認できますが、椎間板も黄色靭帯も正常で、すべり症の所見もない場合、通常のMRIでもこの疾患の認識がないと見逃されてしまうことがあり検査結果を見る医師としても肝に銘じないといけない疾患です。
肥満に伴っている場合が多いと言われていますが、報告では肥満のない若者の報告もあります。肥満に伴っている場合は、減量等内科的な指導、治療で改善する場合もあるとされていますので、肥満に伴ったこの疾患の方は覚悟を決めてダイエットに取り組む必要があります。
それでも改善しない場合や肥満に伴わない場合は、神経障害の具合によっては手術的に脊柱管内の脂肪を切除して除圧する必要があります。