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2017年2月24日 (金)

富士山の裾野はどこか

 この3月から、75歳以上の方が運転免許証を更新する時に認知症がないかどうかをチェックされることになりました。更新時の検査で認知症が疑われる場合、医師の診断書の提出が必要になります。できれば認知症専門医の診断を受けた方がよいですが、75歳以上の方で認知症の疑いがある方は少なくないため、専門医のみでは対応不可能と考えられるのでかかりつけ医の診断でもよいということになっています。
 認知症というのは、ある一点から認知症と診断できる訳ではありません。中高年からずっと診察しているかかりつけ医としては少しお薬の管理があやふやになってきたなとか、身なりが少し乱れてきたという感じで気づくこともありますが、少し気力が低下してきたとか、やや抑うつ気味かなという印象で認知症の早期かなと疑うこともあります。その位の状態で専門医の先生へ紹介しても診断基準は満たさないため、認知症とは診断されないことが多いです。もう少し時間が経って、認知機能低下が明確になってきた段階で確定診断がなされます。
 なので、認知症かどうかの診断は明快にすることには無理があります。富士山の裾野の境界はどこかを決めなさいと言われたらどこに線を引くべきでしょうか。一番明快なのは海岸線なのかもしれませんが、それほど早期に認知症の診断をしてしまったら、判断力のほぼ保たれている段階で免許を取り上げられてしまうことになります。認知症の専門医の先生が診断基準等に従って診断するとしたらある意味富士山の登山口ということになるでしょうか。一つの基準ではありますが、そこが上り坂の一番初めという訳ではありません。
 認知症とまでは診断できないけれど認知機能がやや低下した状態で、認知症ではありませんとの診断書を記載したとして、もし事故を起こしてしまったらその責任がどうなるのか。警察の説明では診断書を記載した医師の責任はないとされているそうですが、民事上ではわからないということです。現状、内科の先生等一般のかかりつけ医は診断書記載には及び腰です。
 もうひとつ、道路交通法の第101条に、運転してはあぶない疾患や状態の患者さんについて医師が公安委員会へ届け出て免許を停止するという規定もあります。こちらには、認知症などの診断の他に「自動車等の安全な運転に必要な認知、予測、判断又は操作のいずれかに係る能力を欠くこととなるおそれがある症状を呈する病気」という項目があるので、確実に認知症と診断できなくても危ないと判断した段階で届け出て運転を停止することもできそうです。
 免許を停止されてしまうと移動手段がかなり不便になってしまうとは思いますが、やはり不幸な事故は極力避けなければならないので医師として患者さんに怒られたとしても積極的に書いた方がよいのではないかと思っています。といってまだ書いたことはありませんが、届出書は取り寄せてあり書く寸前まではいっています。もしご家族から見てもう危ないから運転をやめさせたいということでしたらかかりつけ医に相談してみるとよいかもしれません。認知症の方の場合、免許や車を取り上げた後の対応もよくケアマネージャー等とも相談しておかないと大変かもしれません。

2017年2月23日 (木)

椿油

 うちの皮膚科を受診したことのある人なら分かると思いますが、当院の皮膚科にかかると生活習慣を直しなさいとか余計な化粧品や洗剤は使わないようにとか言われることが多いです。もちろん医学的に必要な通常の薬は使っています。なるべく薬に頼らないでという方針は倫理的にも正しいと思うのですが、患者さんにとっては無理難題ではないのかなと側から見ていてやや不安に思うこともあります。
 そんな訳で我が家には余計な物はあまりありません。間食する物とかジュースとか、おつまみとか。洗剤も添加物の極力ない物で、シャンプーも通常使わないで無添加の石鹸が置いてあるくらいです。まあ、私も特に無ければ無いでいいかなという感じなので夜はお茶を飲むくらいで過ごしています。
 昔から一つ、忌々しげな目で見られていた品物があるのですが、それは髪の毛を固めるワックスです。今までずっとコンビニで売っているような一般的なワックスを使っていたのですが正に化学物質の塊のような商品です。自分的にはまあこれくらいいいかなと思っていましたが、ついに「これ使ってみれば?」と言って洗面台に置かれていた物が…椿油…。
 江戸時代かよ。とこっそり独り言をつぶやいてから使ってみました。まあ髪型とかこだわりもなく私の髪の毛など誰もそれほど気にしていないだろうからひどく跳ねていたりしなければいいんですけど。椿油か…。力士かよと。特に髪の毛を立たせたりすることもないのでまあいいんですけどね。
 1日に数滴しか使わないので、あと何ヶ月使うことになるのか。椿油長期投与の結果報告でもまたブログでしてみたいと思います。くれぐれも、椿油かプッとか笑わないようにお願いします(泣)。

 

2017年2月22日 (水)

膝窩のう腫破裂

 膝の後ろ側(膝窩)の腫れ物を自覚し来院される方は時々います。多くは中高年以降の高齢者で、痛みもなくただ腫瘤が心配な場合と、痛みのある方とがいます。正座などで深く曲げると痛いとか、深く曲げることが困難になったという主訴で来院される方もいます。一番一般的な膝窩の腫瘤は膝窩のう腫と言います。多くは筋肉や腱の間にある滑液包という部分に水が溜まった物で、関節と交通している場合が多いと言われています。関節にも水が溜まっている方も少なくありません。膝関節がすり減る変形性関節症に伴った方が多く、痛みは膝関節由来のことが多く膝窩のう腫自体は、深く曲げた時に障害になるくらいであまり悪い影響はありません。
 膝窩のう腫のみであれば、大きくて支障が強い場合は注射器で内容液を抜くこともありますが、またすぐに溜まってしまう方もいますので、あまり穿刺しないでよいと思います。大きかったり障害が強い場合は手術的に切除することもあります。

 ここからが今回の主題なのですが、時に膝窩のう腫が下腿背側に大きく拡大したり、袋自体が破れて下方に液体が広がってしまうことがあります。さらには下腿に炎症を起こしたり、浮腫状になったりすることもあります。これを通称「膝窩のう腫破裂」と言います。

 最初は下腿の痛み、腫れ、むくみなどが主訴で来院されます。なので、塞栓症などを疑います。赤く腫れていることも多く、そうすると見た目では蜂窩織炎やうっ滞性皮膚炎に見えることが多いです。採血で炎症はあるものの感染徴候に乏しく、D-dimerなどもあまり上昇しておらず、エコーで明らかな血栓もなく、膝窩のう腫が下腿へ拡張していると膝窩のう腫破裂かと思われます。膝窩のう腫内部に通常の液体の他に血腫や滑膜等が観察されることもあります。 このような場合、膝窩のう腫が主因だろうと判断しても蜂窩織炎等を完全には否定できないことも少なくありません。当初は炎症止めや抗生剤の内服をして経過観察することが多いです。穿刺して極力嚢腫内の液体を吸引したり膿が貯留していないか確認したりすることもあります。 
 膝窩のう腫破裂が主因である場合は炎症止めのみで改善することが多いです。関節リウマチに合併する場合などは炎症が強いことがあり、嚢腫内にステロイド注射をするとよく効きますが感染症の確実な除外診断が必要です。
 膝窩のう腫破裂の多くは初診時下腿の蜂窩織炎やうっ滞性皮膚炎との鑑別が悩ましく、いろいろな検査や診断的治療を経て確定できる場合が少なくありません。ただ、他の疾患に比べると通常経過は良好です。

2017年2月16日 (木)

薬が嫌い

 薬が嫌いな方の気持ちはよくわかります。私自身、喘息の薬は発作時以外も毎日吸引するよう指導されても発作が治まるとすぐに止めてしまったり処方箋通りに飲まなかったり、お茶で薬を飲んだり非常にダメな患者です。
 医師として、お薬が嫌いという方には無理には処方しないように配慮したいと思います。医学的に服薬が推奨されている状態でも、なるべく少量短期間にしたり、希望に沿って薬を使用するように努力したいと思います。多少服薬がうまくいっていなくても仕方がないとも思います。
 ただ、薬が嫌いという場合、少し注意する必要があることもあります。
 高齢の方が薬が嫌いという場合、早期認知症のことが少なくありません。薬をもらっても飲み方がわからない、把握できない、薬の保管や管理ができないというようだと、「薬は嫌い。」という表現になる場合が少なくありません。「薬が効かない。」と話されて、よく聞いてみると痛み止めではなく一緒に処方された胃薬を痛み止めと思って飲んでいたりと服薬がうまくいっていないこともあります。
 もうひとつは、むち打ちの方でも薬は嫌いということが少なくありません。この訴えは、むち打ちでずっと治らない方の特徴の一つでもあります。そういう場合、神経系の障害やPTSDなど外傷後ストレス障害、所謂線維筋痛症など通常の消炎鎮痛剤は効かないタイプの障害を考慮して対応しないとうまくいきません。
 はっきりしない副作用を生じている場合もあります。薬を飲むとなんとなく調子が悪いという程度の副作用が原因で薬が嫌いになる方もいます。高血圧の薬など、あまり副作用はないと思っている方が患者さんでも医師でも少なくありませんが、意外に副作用はあるものです。胃腸薬でも副作用は一定の確率で起こっています。なので、薬が嫌いな方には潜在性の副作用が生じている可能性も考慮しないといけません。
 薬が嫌いという場合、純粋にそうなのか、嫌いになる要因があるのかどうか、少し考えてみる必要があるかもしれません。

2017年2月15日 (水)

圧迫骨折戦争状態

 相変わらず、脊椎の圧迫骨折の方は毎日のように来院されています。圧迫骨折はテレビで「いつの間にか骨折」と宣伝されているように痛みを感じない方から、激痛で身動きできなくなりベッド上でオムツをして寝たきりになってしまう方まで本当にひとりひとり臨床像が異なります。
 高齢者が腰背部痛で来院された場合、初診時のレントゲンでは診断できないことも少なくありません。症状や所見から、おそらく圧迫骨折だろうという診断になった場合、確定するにはMRI検査が有用ですが、行うか行えるかどうかもひとりひとりの状況で検討が必要です。
 圧迫骨折となった場合、一人暮らしか家族と同居か。自宅で療養できるか入院が必要か。通院できるか、往診にするか。介護保険をもっているか、電動ベッドを借りたりヘルパーさんを導入したりするかどうか。他の持病や認知機能はどうか。鎮痛剤はどの程度の強さで使うか、骨粗鬆症の治療をどの程度行うかどうかなど、様々なことに配慮して各方面への連絡、連携が必要になってきます。発症前は元気にスポーツしていた方でも、その日を境に要介護者となってしまったりします。
 現状、自宅や高齢者施設ですでに在宅診療を受けている方でも、普通に整形外科に受診されてきますが、今のように内科の主治医や在宅の先生が圧迫骨折を診られない状態ですと、整形外科医だけでは近い将来本当に診きれなくなるのではないかという不安に駆られます。胸の聴診をするのと同じような感覚で脊椎の叩打診をするようにせめて在宅の先生にはお願いしたいところです。
 もう高齢者の骨粗鬆症や圧迫骨折は臨戦状態から戦争状態に移っているほど逼迫した状態です。生活習慣病の治療をするのと同じレベルで骨粗鬆症の治療もして圧迫骨折を含む骨粗鬆症性骨折を予防していかないと、心肺系は元気だけれど動けないという方々が激増してしまうのではないかと思います。70歳を超えて血圧やコレステロールの薬は飲んでいるけれど骨粗鬆症の薬は飲んでいないという女性には、高齢になったら「生活習慣病と骨粗鬆症はセットで」という感覚が一般化してほしいものです。

2017年2月 4日 (土)

パーソナリティー障害と疼痛

 これは非常にデリケートな問題ではあるのですが、整形外科医には避けて通れない事柄です。慢性的な肩こりや腰痛を抱えている方の中には身体的な問題や障害ではなく、心因性の要因によって痛みを生じている方が少なくないと言われています。
 心因的、精神的要因にもさまざまな状態がありますが、その一つにパーソナリティー障害があります。パーソナリティー障害の方の多くは統合失調症やうつ病のように精神的な問題が顕著に現れることなく普通に生活されています。最近は大人の多動症なども知られるようになってきましたが、それほど稀なことではありません。一般社会での有病率で10〜15%前後、精神科のクリニックで25%くらいですが、慢性疼痛を専門とする医療機関への受診者では40〜70%にパーソナリティー障害が存在すると言われています。この手の論文での頻度は大抵多すぎる印象があるので一概にそれほどの頻度なのかは微妙ですが、少なくとも整形外科の診療所にも多くのパーソナリティー障害の方が通院されているはずです。
 医師を大きく二つに分けると、身体科の医師と精神科の医師に分かれます。要するに精神科の医師以外には、精神的な状態や疾患について診断し治療することはなかなか困難です。痛みを扱う科の医師をしていれば、この方は精神的な疼痛が主だろうという推測は立てられますが、確定診断や治療は精神科医師に依頼した方が確実です。ただ、整形外科を受診した方に、「あなたは精神的な要素が主なので精神科を紹介します。」と言っても納得できないかお怒りになることも少なくありません。慢性的に疼痛を抱えている方は、ストレスチェック等も兼ねて精神的な面もできれば一度専門医の診察を受けてみるとよいと思います。
 パーソナリティー障害による、もしくは伴う慢性疼痛の方には身体的に大きな障害がないので、運動や環境を整えて改善しましょうという話をしても、逆に不安感や不満感を増幅して症状が悪化してしまうこともあります。西洋医学的な診断や治療はすべてうまくいかず、寛容に受け入れて手当てをしてくれるマッサージ等の方が有効なこともありますが、完治はせず延々とマッサージを続けていくことにもなりかねません。本当は認知行動療法などの精神的な方法をもっと積極的に導入した方がよいのだろうと思いますが実施している機関も少なく導入するのは難しいのが実際です。
 痛みを訴える方に対して寛容過ぎて安易に鎮痛剤を処方したりブロック注射などを繰り返したり休業診断書を記載したりすると、それがさらに痛みへの依存を生じてしまうような現象をオペラント条件付けというそうです。なので疼痛の訴えに対しては受け入れつつ、安静や休業、過度な治療から運動や適度な治療介入へと変容していくようにすることが大切です。
 慢性疼痛の方には民間療法や薬剤、医療もそうですが様々な介入が行われています。それでも疼痛コントロールがうまくいかないこともあります。場合によっては、疼痛を完全に無くすことを目指すのではなく日常生活の質を改善することを目指すとよいのかもしれません。

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