不顕性仙骨骨折
仙骨というのは腰椎を支える骨盤側の脊椎部分のことで、上に腰椎、両側に腸骨とつながっています。高齢者の腰殿部痛では、この部分が明らかな外傷がなくても骨折していることがあります。これを不顕性の仙骨骨折(脆弱性骨折)と言います。
一般的な腰痛より下の方、殿部を中心に痛い方が多いですが、腰部から大腿近位に放散痛があることも少なくありません。下肢にしびれを生じたり頻尿や便秘などの膀胱直腸障害症状を呈することもあり、腰椎の病気との鑑別が難しいです。丹念に仙骨部に圧痛があるかどうか。骨盤側の圧迫や動作痛があるかどうかを確認することが重要となります。仙骨の骨折は転落や交通事故などの外傷ではレントゲンでわかることが多いのですが、骨粗鬆症性の脆弱性骨折ではレントゲンでは骨折が見えないことが多く、診断の確定にはCTやMRIといった断層撮影が必要になることが多いです。本当に診療所でもMRIを持っているとよいなと思います。将来的に小型で高性能のMRIが診療所にも置けるとよいのですが、過剰検査になる恐れもありやはり病院に依頼する方が現実的なのかなと思います。
仙骨の不顕性骨折と診断でき、腫瘍による病的骨折ではないと判定できれば、治療としては骨粗鬆症の治療をして骨癒合を待つということになります。1~2ヶ月すれば疼痛はかなり治まります。痛みが強いと入院する方もいますが自宅療養できる場合も多いです。
腰椎の圧迫骨折と重複して仙骨にも不顕性骨折を生じる方もいて、このdouble lesionですとますます初期診断は困難です。骨折が治ってきてからレントゲンで気づくという結果になることもあります。
仙骨骨折は通常治りやすい骨折なので比較的心配はいりません。どちらかというと骨粗鬆症の治療を強化しないといけない指標のような疾患かもしれません。
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