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2017年5月24日 (水)

ポジティブとネガティブ

 日頃人が齢を重ねて亡くなっていく姿を診ていますと、幸せな老後とは何だろうとよく考えます。もちろん、健康で社会的、金銭的にも恵まれ人間関係も良好であれば最高に幸せだと思いますが、人生そううまくはいかないものです。

 人は心身として20~30台がピークでしょう。以後は緩やかな下り坂を歩んでいくことになります。それは誰も逆らえない自然なことです。それを受け入れられるかどうか。最近その辺りにも少しヒントがあるような気がします。

 90歳を超えて通院している方も最近は少なくありませんが、中に非常にポジティブな方と非常にネガティブな方がいらっしゃいます。
 ネガティブに傾いていくと、歩けなくなって悲しい、体のあちこちが痛い。食欲も出ない、眠れない、おしっこが近いなどなど、様々なことを訴えます。そのそれぞれに治療をしようとすると多数の専門医から多数の薬が処方されたりすることになります。それでも、あの薬は効かない、副作用で飲めない、パッチ剤はかゆくなる、リハビリしたら逆に痛いなど何に対してもネガティブな面を話されます。介護にしても家族がよくしてくれない、ヘルパーさんは週に1時間しか使えない、配食はおいしくない、ポータブルトイレは嫌などなど。
 年齢的にやむを得ない症状や事象がほとんどかと思われ、どこまでどのように治療すべきか、どのように介護、対応していくべきなのか。そうこうしているうちに亡くなっていく過程を診ていると、あれほど日々のすべての事象に不満を感じていて長寿であったことが幸せだったんだろうかと不安になってしまいます。
 時に、非常にポジティブな方もいます。歩けないけどシニアカーで買い物に行けるから幸せ、あまり食べられないけどご飯がおいしくて幸せ、腰は痛いけど動けるから幸せ。家族は遠いけど時々電話してくれるから幸せ、ヘルパーさんは良くしてくれるから幸せ。本当に自分の限られた心身の状態の中に幸せを見つけていける方は診ていても幸せをもらえる感じがします。そういう方には治療も良く効きます。小児用くらいの鎮痛剤でも、「あの薬は頓服でも良く効くね」とか。1枚湿布すれば元気に過ごせるよ。とか。
 気の持ちようは大切です。メディアでは齢を重ねることがダメなような宣伝をしてアンチエージングで儲けるような宣伝ばかりですが、円熟して達観できるように心を誘導することが一番です。少しでもポジティブになれるようにお手伝いできればと思います。

2017年5月11日 (木)

骨は硬いけれど折れやすい場合

 骨折しやすい病気というと骨粗しょう症が有名ですが、その診断は意外と微妙なものです。
診断基準では骨密度が70%未満とか、脆弱性骨折の既往があるとかいう基準がありますが、それだけでは骨の状態を評価することはできません。つまり「骨密度は良いのに折れやすい」という状態も稀ではないということです。
 骨粗しょう症には骨密度と骨質というふたつの要素が関係しているとされています。例えば糖尿病は骨密度が良くても骨質が低下しており骨折のリスクとされています。骨質が低下する状態にも注意した方がよいですが、今日の話はまたそれとは違うお話です。
 骨密度を測定する時、測定する部位の骨や関節が変形していたり、骨棘と呼ばれる突起を生じていたりすると、骨密度は高く測定されます。なので、単純に骨密度の測定値を見ても評価が実際の骨折リスクとは異なることがあります。腰椎でも大腿骨でも手首でも踵でも、骨の状態を把握した上で測定値を見る必要があります。
 強直性脊椎炎や強直性脊椎骨増殖症と言って、脊椎周囲の靱帯部分が骨化してしまう疾患があります。進行すると、脊椎全体で竹のように椎間板部分が節に見える一つの棒状になってきたりします。この状態ですと、骨密度の測定自体困難ですが、もし測定しても硬い結果になります。このような脊椎では周囲は硬くなるのですが骨髄部分は薄くなっていきます。なので骨は硬いけれど折れやすいという状態になることがあります。脊椎の圧迫骨折をしても、レントゲンでは判定できずMRIで初めて髄腔の骨挫傷の診断できることもあります。脊椎がポキッと変な部位で骨折して脊髄を損傷してしまうこともあります。
 強直性疾患のレントゲンをみて髄腔が薄いなと思う時に、骨粗しょう症の治療を勧めるべきかどうか。それには骨質の評価に加えてさらに歩行状態や全身状態を評価して骨折のリスクなども判断する必要があります。
 骨折のリスクについては、骨密度の他にも様々な評価が必要なことは理解していただいた方がよいかと思います。

2017年5月 7日 (日)

ゴーンさんと日本の医療

 ゴーンさんが日産の社長を退任されました。ゴーンさんが経営危機に陥った日産にやってきた頃のことは覚えていますでしょうか。印象深かったのは、それまで系列で混在していた営業所をレッドステージとブルーステージに統廃合し整理したことでしょうか。下請け企業も合理化して人員もリストラしたりして日産の経営をV字回復させたことは周知の事実でしょう。
 JALの時もそうですが、経営を立て直す時には経営の合理化、整理、コストカット、人員削減が基本であると思います。収益が縮小してもそれ以上に支出を縮小して収支を成り立たせるという手法が一般的です。
 振り返るに、日本の社会保障費は雪だるま式に膨れ上がっています。このまま行けば破綻することは暗黙の了解になっているのではないかと思います。これから社会保障費を破綻させずに持続可能にしていくためには、基本的に事業を全体としてなるべく拡大しないようにして、支出をなるべく縮小して収支が合うようにしていく必要があることに異論のある方はいないでしょう。
 しかし実際に国はどういうことを行っているのでしょうか。
ひとつには、ほとんど全ての専門職をバラバラの事業所に配置転換していっています。もちろんそれぞれに固定費も事務費も人件費もかかり、バラバラになっているので連携もままならなくなっています。ゴーンさんがレッドステージとブルーステージに統廃合したのとは逆の方策を取っています。
 医療にかかるコストとしては、薬事法の古い規定を修正したり医療機器や薬剤の購入コストの削減などをすれば大幅に全体のコスト削減ができると思いますが、全くする気配はありませんね。さらには専門職の人材派遣を可能としたことで医療機関や介護事業所が求人する場合のコストは爆発的に増加しています。これもゴーンさんの日産改革とは逆の方策を進めています。つまり事業に掛かるコストが増大する方向へ政策を進めているとしか思えません。
 人員はどうでしょうか。日本はすでに人口減少社会になっています。高齢化が叫ばれていますがそれももう少しで減少に転じます。それを見越した上で、医師も看護師もその他スタッフをこれからどんどん増やそうと計画しています。ビジネス的に考えれば顧客が減っていく地域で、営業などの人員をこれからどんどん増やそうとする企業と同じ思考です。JALでは虎の子のパイロットさえも人員削減したのと全く逆の方針を貫いています。
 現在の医療政策は、内部コストが増大しても事業を拡大して発展させていくビジネスモデルを展開している企業と同じに見えます。政府の中に経営能力のある経営者が入っていれば今のようにはならなかったのではないかとか、いっそのことゴーンさんに政策会議の中に入ってもらったらどうかとか思ってしまいたくなるところです。

 そもそも発想の原点が違うのではないかと考えてみると全てが納得できます。つまり日本の医療を持続不可能にしようというのが出発点だとすると、現在の方策は全てが計画通り順調に進んでいます。なるほど、日本の経営者も能力が高いなと思います。そう考えると、日本の今までの医療が破綻した先のことも想像に難くありません。あの人がこんなことを言うんだろうなとか、あの団体がこう動くんだろうなとか。
 そんなことを考えながらゴールデンウィークが過ぎていきます。

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