ゴーンさんと日本の医療
ゴーンさんが日産の社長を退任されました。ゴーンさんが経営危機に陥った日産にやってきた頃のことは覚えていますでしょうか。印象深かったのは、それまで系列で混在していた営業所をレッドステージとブルーステージに統廃合し整理したことでしょうか。下請け企業も合理化して人員もリストラしたりして日産の経営をV字回復させたことは周知の事実でしょう。
JALの時もそうですが、経営を立て直す時には経営の合理化、整理、コストカット、人員削減が基本であると思います。収益が縮小してもそれ以上に支出を縮小して収支を成り立たせるという手法が一般的です。
振り返るに、日本の社会保障費は雪だるま式に膨れ上がっています。このまま行けば破綻することは暗黙の了解になっているのではないかと思います。これから社会保障費を破綻させずに持続可能にしていくためには、基本的に事業を全体としてなるべく拡大しないようにして、支出をなるべく縮小して収支が合うようにしていく必要があることに異論のある方はいないでしょう。
しかし実際に国はどういうことを行っているのでしょうか。
ひとつには、ほとんど全ての専門職をバラバラの事業所に配置転換していっています。もちろんそれぞれに固定費も事務費も人件費もかかり、バラバラになっているので連携もままならなくなっています。ゴーンさんがレッドステージとブルーステージに統廃合したのとは逆の方策を取っています。
医療にかかるコストとしては、薬事法の古い規定を修正したり医療機器や薬剤の購入コストの削減などをすれば大幅に全体のコスト削減ができると思いますが、全くする気配はありませんね。さらには専門職の人材派遣を可能としたことで医療機関や介護事業所が求人する場合のコストは爆発的に増加しています。これもゴーンさんの日産改革とは逆の方策を進めています。つまり事業に掛かるコストが増大する方向へ政策を進めているとしか思えません。
人員はどうでしょうか。日本はすでに人口減少社会になっています。高齢化が叫ばれていますがそれももう少しで減少に転じます。それを見越した上で、医師も看護師もその他スタッフをこれからどんどん増やそうと計画しています。ビジネス的に考えれば顧客が減っていく地域で、営業などの人員をこれからどんどん増やそうとする企業と同じ思考です。JALでは虎の子のパイロットさえも人員削減したのと全く逆の方針を貫いています。
現在の医療政策は、内部コストが増大しても事業を拡大して発展させていくビジネスモデルを展開している企業と同じに見えます。政府の中に経営能力のある経営者が入っていれば今のようにはならなかったのではないかとか、いっそのことゴーンさんに政策会議の中に入ってもらったらどうかとか思ってしまいたくなるところです。
そもそも発想の原点が違うのではないかと考えてみると全てが納得できます。つまり日本の医療を持続不可能にしようというのが出発点だとすると、現在の方策は全てが計画通り順調に進んでいます。なるほど、日本の経営者も能力が高いなと思います。そう考えると、日本の今までの医療が破綻した先のことも想像に難くありません。あの人がこんなことを言うんだろうなとか、あの団体がこう動くんだろうなとか。
そんなことを考えながらゴールデンウィークが過ぎていきます。
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