早期介入の矛盾
最近は介護保険の判定基準が昔に比べるとかなり厳しくなっています。コンピューター判定を操作すれば判定基準は思うように調整できるのでしょうが、もはや早期に介入するという言葉に虚しさを感じるようになって来ました。
認知症にしても、老衰にしても、ある一時点をもってきっぱり診断できる訳ではありません。多くの場合、平地か坂道かわからないくらいのわずかな下り坂を歩む感じで徐々に体力や認知機能が低下していき、だんだん日常生活に支障を来すようになっていきます。どの時点から支えが必要なのか。どの時点で正常から外れるのか。本当に微妙で難しい判断です。介護保険の申請をどの時点で行うべきか。ご本人やご家族の事情にもより様々な場合があります。
90歳過ぎの夫婦で、確かに認知症はないですが奥様は人工関節術後で家事がきつくなって来たということで申請したところ非該当。80代も後半で診療所への通院も困難になって来て家事が辛いということで申請してみたところ非該当。
昔から通院していてもう明らかに下り坂を下っていてMCI(軽度認知機能障害))にはなっているけれど認知症まではなっていないという方では、早期介入ということで認知症専門医療機関へ紹介しても「まだ認知症とは言えません。」という診断。確かに。でもどのくらいの支援をすれば良いのか。
連続する人生の中で、ある時点から関与する機関が早期介入するという概念には矛盾が潜んでいるのではないかと思います。そういう面では診療所はしっかり関与することができれば数十年、理想的には一生涯関与していける所になり得るのではないかと思います。そうするためにはチームとして継続的に地域をみていけるシステムを構築する必要があります。そこが難しいところではあるのですが。
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