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2017年12月27日 (水)

上棟式と年末年始休診のお知らせ

 昨日は新しい診療所の上棟式でした。まだ外枠のみですが、内部に入らせていただきました。今度の診療所は今より天井も高く、快適に過ごせそうです。診療所として色々こだわって作っていただいているので実際に体感するまでいろいろ不安でしたが、実際に入ってみて期待がより大きくなりました。これまでの診療所の概念を大きく変えて、これからの診療所のあり方を示すことができる場所にしていけたらよいなと思っています。
 これから内装、外構などまだまだ工事が続き近隣の方にはご迷惑をおかけしますが、ご容赦をお願いいたします。
 今日12/27の18:00で年内の診療は終了させていただきます。年末年始は在宅診療の待機をしております。年明けは1/4から通常通り診療を再開いたします。ご不便をおかけしますがお正月をお健やかにお過ごしください。

2017年12月10日 (日)

漢方で頻脈

 漢方というと、昔小学校の時に学校から帰ったら家の中から得体のしれない匂いがした時のことを思い出します。台所に行くと、そこが食べ物を扱う所とは到底思えない匂いに包まれていて、鍋の中に茶色い液体がクツクツと煮立っていました。こんな物飲めるのか?と思いましたが結局飲まされて、もう絶対続けられないと訴えて親を断念させたことがあります。

 今は漢方も粉になったりカプセルになったりして大変飲みやすくなって、西洋医学の医療機関でも広く使われています。

 漢方というと緩徐に効いて副作用などもないと思われている方が少なくないと思いますが、効果があるということは絶対に副作用もあるということです。逆に全然副作用がないということになったら効果も全くないということになると思います。

 整形外科領域では、足が攣る方によく芍薬甘草湯を処方します。これは定期処方では毎食前か毎食間に1日3回飲むことになっています。昔は1日3回飲んでいる方も少なくありませんでした。最近は、芍薬甘草湯をたくさん飲むと血圧が上がったり浮腫んできたりする副作用を生じることが少なくないことがわかってきました。芍薬甘草湯が体内にもともとあるアルドステロンという物質と同様の働きをするため、血液中のカリウム濃度が低下することが主な原因です。なので現在では足が攣った時に頓服するか、夜間に攣ってしまう方は就寝前に1回飲むか、運動や遠出した時などに内服するように必要最小限使うことが普通になっています。また、内服中は時々血液検査を行ってカリウムを中心にチェックすることが必須です。

 ところで、冬になると風邪を引いたりインフルエンザになった時にも漢方が使われることが少なくありません。有名なのは葛根湯と麻黄附子細辛湯でしょうか。簡単に言うと葛根湯は熱が出ている時、麻黄附子細辛湯は悪寒がして体を温めたい時に使います。

 この週末、少し喉が痛くて軽い風邪を引いてしまいました。少し寒い感じもしたので金曜日は早く寝たのですが、なんか動悸がして寝つきが悪く、風邪のせいかなと思っていました。土曜日はそのまま過ごし今日も少し体がだるかったので家でゆっくり過ごしました。夕食くらいになって、またどうも動悸がするなと思って脈を計ってみると90100くらいになっています。まあ、一時的な頻脈かなと思っていましたが、そのうち手指がなんかレイノー現象になった時にようにじりじり痛い感じになってきました。別に指が白くなったりしておらず、コタツに手を入れて様子を観ていました。指の症状が出て、そういえば金曜の夜と今日の夕方麻黄附子細辛湯を飲んだなと気が付きました。麻黄附子細辛湯には、交感神経を刺激するエフェドリンと同じような作用があります。麻黄の副作用として交感神経刺激症状が有名です。

 というわけで、まだ脈が100くらいあるのですが早々と布団に入って安静にしたいと思います。しばらく眠れそうもありませんが、漢方の作用が減弱してくるのを待つしかないかなと思います。

 風邪の症状は大した事なかったので薬は使わない方がよかったのかなと思いますが、自分で処方する薬のことをよく知るように、機会があればいろいろな薬を自分に使ってみたりしています。他にもいろいろ副作用を経験していますが、意外と体格が小さいからか副作用が出やすい体質みたいなので、気を付けないといけませんね。

2017年12月 6日 (水)

虫様筋損傷とクライミング

 恥ずかしいのでほぼ秘密ですが、最近ボルダリングをかじっています。近くにボルダリングジムができて以前から気になっていたのですが、肩関節痛も収まって動くようになったので子供と一緒に行ってみました。この年齢から本格的に上級を目指すのは無理そうですが、自分のペースでいつでもできて、子供の頃木登りや化石山で遊んだ感覚がして楽しいので趣味の一つにしようかなと思っています。
 クライミングとかボルダリングというと、整形外科医としては虫様筋損傷という疾患が頭に浮かびます。手の虫様筋というのは手のひらの奥にあり、指を屈曲する腱から始まり、指を伸展させる腱に付いている小さな筋肉です。通常筋肉というのは端が腱になって骨に付いていますが、この筋肉は腱から腱に渡っているような構造になっており、この筋肉が働くと指のDIP,PIP(第1,2)関節が伸展しMP(拳に相当する部分)関節が屈曲します。なので指で物を握ったりつまんだりする時に働きます。特に環指、小指の虫様筋は手のひらの奥では両隣の指の腱に橋渡しするように付いています。
 虫様筋損傷は、クライミングの上級者等が一つの指でぶら下がったりする時に虫様筋が隣の指との間で引き伸ばされるようになり損傷されます。特に環指、中指の虫様筋は橋渡しのようになっているため、中指か環指の1本でぶら下がるか、示指と中指の2本でぶら下がって環指は外すとその間で虫様筋が近位方向と遠位方向と別の方向に引き伸ばされて損傷されることが多いようです。典型的には受傷時にプチッとかビシッとかいう音を自覚して腫れてきますが、あまりポップ音は気付かない方もいます。この外傷は受傷機転から考えても、ほとんどがクライミングやボルダリングで生じるようです。私が診察した方も今のところクライミング関係の方のみです。
 治療としては、一つの指へ負担をかけることを避けて修復を待つ場合がほとんどです。損傷した虫様筋が引き伸ばされないよう隣同士の指をテープで固定するbuddy tapingをする場合もあります。文献上はやはり一つの指でのパフォーマンスがやや低下するとされていますが、大きな障害になることは少ない印象があります。
 自分も虫様筋損傷を起こすくらいのレベルまで頑張ってみたいと思いますが、一つの指で体を支えられるなどやはり超人ですよね。

2017年12月 2日 (土)

砂糖と塩

 料理を多少なりともしたことのある人だと分かると思いますが、味の調整をする時、ちょっと辛いかなと思って砂糖を入れ、甘くなりすぎたと思って塩を入れ、やばいまた辛くなったと思って砂糖を入れ、と繰り返したところで美味しい料理はできません。料理が美味しくなるのは下ごしらえから最初の味付けがうまいからで、さまざまな調味料を山盛りにしたからではありません。
 ところで毎回診療報酬改定の前年の秋になると、某国営放送などメディアでは「医師の収入の基となる国の医療費が増加しました。このままだと国の財政が破綻しかねません。財務省は診療報酬の減額を求めています。」という報道がなされます。もう風物詩になっていますが、どれほど高額な薬剤が登場しようと、製薬会社が史上最高益を更新しようと、電子カルテや予約システムなどのIT機器が医療に激増しようとも、悪いのは医師の給与という大本営発表は延々と繰り返されるのだろうなと思います。
 診療報酬改定の度に思うのですが、あっちの点数を少し上げてみよう、こっちの点数を下げてやろうという付け焼き刃的な改定は、まるで砂糖を入れたり塩を入れたりして味を調整しようとする料理人と同じです。もうどんな料理なのか原型を留めないほどになってしまい、まるでジャイアンのスープのようになっているのが今の診療報酬だと思います。
 国家財政が厳しい状況では、大きくできないピザをどう分配するか議論するしかありません。各種団体がうちの取り分は減らさないでくださいと与党のパーティー券を買ったり選挙で票を集めたりしていますが、いくらパーティー券を買っても、参加しても、パーティーなんかに出ないでも直接官邸に出入りしている団体に勝てるはずがないのに。
 自分の取り分は小さくできるよ、という人間が一番報われる仕組みを作らない限り、出来杉君よりジャイアンの方が出世してしまうでしょう。まあ、もともとジャイアンをいかに増やすかに国が注力しているのですからため息しか出ませんが。

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