2018年6月
          1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
無料ブログはココログ

« 整形外科学会2018 | トップページ

2018年5月30日 (水)

HMGCR抗体関連筋症

 脊椎疾患の中で診断・治療ともに難渋する疾患の一つに「頚下がり症候群」があります。文字通り首が前屈してきて、前を見られない程になってしまい日常生活動作が著しく障害されます。
 原因としては、整形外科的には高度の変形性脊椎症や頚椎のすべり症、頚椎の圧迫骨折で前屈することもあります。しかし、高度の頚下がり症候群の方はどうも整形外科的には説明困難な場合が多いように思います。
 脊椎疾患以外には、パーキンソン病やALSなどの神経疾患の一症状として頚椎が高度に前屈してしまうこともあります。そこで神経内科へ精査をお願いすることも少なくありませんが、四肢や嚥下など他の領域に障害がないと大抵はっきりした診断は付きません。
 脊椎疾患でも神経疾患でもない原因として、薬剤性の頚下がり症候群の例も報告されています。その一つにコレステロールを下げる薬やDPP-4阻害薬という糖尿病の薬などによる副作用があります。コレステロールを下げる薬では横紋筋融解症という筋疾患が有名です。この疾患では筋肉痛を生じたり力が入らない、だるいなどの症状を生じ、悪化すると壊れた筋肉の成分のために腎臓が障害されることもあるため注意が必要です。
 コレステロールを下げる薬による筋障害として、この薬剤に対する免疫反応が筋肉にも反応してしまうようになり免疫的に筋障害を生じるという疾患もあります。これがHMGCR抗体関連筋症です。この疾患でも体幹に近い筋肉が障害されることが多く筋痛や歩行障害を生じることもありますが、時に頚下がり症候群として発症する場合もあるようです。
 コレステロールを下げる薬による筋痛は内服している方の5%程度に生じるようです。コレステロールを下げる薬やDPP-4阻害薬という糖尿病の薬を飲んでいる方はため息が出るほど多いので、当院に通院している方の肩こりや腰痛でも年間何人かは薬の副作用による疼痛のはずです。大変申し訳ありませんが、現状薬剤性の肩こりや腰痛はなかなか診断できていないのが現実です。というのは肩こりや腰痛の方に片っ端から採血してCKという項目を検査する訳にもいかず、肩こりや腰痛の方に内科の薬を一時休止してみてくださいとも言いづらく、なかなか診断に至ることが難しいためです(といったら言い訳かもしれません)。
 HMGCR抗体関連筋症の注意すべきところは、現在はコレステロールを下げる薬を内服していなくても過去に内服していれば発症する可能性があるという点と、さらにもし薬剤性であっても、薬剤を止めても軽快しない可能性もあり、ステロイドや免疫抑制剤をその後長期に使用しないといけないかもしれない点です。ただし、この疾患でコレステロール内服歴のある方は6割程度で内服歴のない方も4割程度いるとのことですので完全に薬剤のせいとも言えない訳ですが、コレステロールの薬を内服していて筋肉痛や肩こりや腰痛に悩んでいる方は、CKという項目を採血してみる必要があるかと思います。または一応薬を休止することも考慮した方がよいかもしれません。
 HMGCR抗体関連筋症は整形外科では多くの方が見逃されていると思います。それはやはり筋痛や筋疾患で採血することの敷居が高いのが一番の原因だと思います。画像的には障害されている筋肉がMRIで高輝度になるため、エコーで観察すれば分かるかもしれません。実際エコーで横紋筋融解症を見つけたこともあるので、最近は筋痛の方も積極的に観察するようにしています。
 診療の時には内服中の薬剤も、これまで飲んだ薬剤も、本当は全て把握できるようにすべきかと思います。お薬手帳は必ず持参していただけるようお願いいたします。生活習慣病の薬は特に害はないと思っている方が多いと思います。必ずしもそうとも言えないのですが赤信号もみんなで渡れば怖くない的にみんな飲んでいるので不安感は少ないですよね。
 

« 整形外科学会2018 | トップページ

コメント

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/3098/73589551

この記事へのトラックバック一覧です: HMGCR抗体関連筋症:

« 整形外科学会2018 | トップページ