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2018年5月 2日 (水)

あしたのジョーにドーピング

 年代的に、あしたのジョーという漫画は大好きです。自分の好きなこと、命を懸けて立ち向かえることに全力でぶつかり、最後真っ白になるまでやり切ることができれば例え短命だったとしても人生に悔いはないでしょう。そんな生き方に憧れたりもします。
 もしジョーが外来に診察に来たら医師としてどうしようかなと思います。
「先生、手が震えるんですが。」とか「時々フラつくんですが。」とか言われたら、どうするべきでしょうか。根本的な対応をしようとすれば、ボクシングを止めなさいか、クロスカウンターを狙うのは止めて、極力殴られないボクシングにしなさいと指導すべきでしょうか。どちらもジョーではなくなってしまうアドバイスですが。それとも、めまいの薬を出したり震えやしびれの薬を処方して対症療法すべきでしょうか。そんなことして意味があるのでしょうか。
 
日々診療をしていて、ある意味ジョー的な生き方をしているな〜と思う方々に出会います。例えばそう、精神的に健康で知的にも問題のない愛煙家の方々です。タバコが人体によくないこと、様々な病気の元であること、寿命を短縮する可能性が高いことは把握した上で、それでも自分の好きなようにするという選択をしている人たちです。そういう生き方も有りだと思います。他人に悪影響を及ぼさない限り、みんなが長寿を目指す必要はないと思います。「短命上等」といういなせな生き方なのだと思います。
 糖尿病や脂質異常症、高血圧があっても毎日の飲酒や食事を全く節制しない方もいます。糖尿病の薬をたくさん飲みながら、コーヒー牛乳やジュースを1日2
Lとか飲んでいることを思わず知ってしまうこともあります。
 根治的には、というか倫理的にはやはり治療を考える前に禁煙したり食事や生活習慣を改善することが先決でしょう。タバコや食事をそのままにして投薬を続けることが本当に正しいのでしょうか。

 医師としては、まるであしたのジョーにドーピングをしている感じがしてなりません。俺は例え死んでもボクシングをやるぜ、というジョーに下手な薬を処方するのは忍びない。

 
EBMとかガイドラインとかに沿って診療に当たると、まず2〜3ヶ月食事や運動など生活習慣を改善しましょうと指示して、それでも検査値がよくなければ治療を開始され、あとは延々と薬が継続されます。延々と薬を処方することは、製薬会社、医師、節制したくない患者さんの三者にとってwinwinwinです。最近は次から次へと新しい薬を追加されて、EBMの名の下に山盛りで薬を飲んでいる方もいますがどうなんでしょうか。
 もちろん、人間は精神的に弱い生き物です。なかなか生活習慣を改善できる方は多くはないでしょう。しかし、「私は自分のしたいようにすることに決めてるの。」と断固タバコや不摂生を貫く方だったらどうでしょう。節制している方と同じように公費を投入して治療をすべきでしょうか。もちろん公衆衛生的にはそういう方が将来脳梗塞になったり透析になったりすると、公費で治療した場合より社会的費用負担が増加するため、公費で治療した方がトータルではよいことになっています。しかし、倫理的、ジョー的にはどうなのでしょうか。公費を導入するのであれば、投薬の前に栄養指導や心理的・社会的サポート、精神的な指導などを徹底するべきではないかなと思います。そういう意味では、本当は医師よりも栄養師や認知行動療法のできる心理士、保健師などが前面で活躍して人々の意識や生活習慣を変えていくのが理想のように思います。

 最近呼吸器内科の友人と話していると、タバコ吸っている肺がんの方にオプシーボとか使っていいのかな?と言います。

 人間、レベルはあっても多少はジョー的に生きています。山に篭って精進料理を食べている仙人でもなければ、完全に自律できる人間などいないでしょう。いったいどこまで許容しどこからどこまで公費で医療介入するのか。そろそろ本格的に決めないといけない時期にきています。議論するだけではダメで、どうするのか決定しないといけない時代になっています。
まあ現状与党が与党なだけに、この手の議論には本腰が入らないでしょうが。
 ジョーの生き方には憧れます。それができない自分なので、自分の仕事を全うするためにできる限りの節制をしてます。ジョーのような生き方を選ぶのであれば、その結末にも責任を取れる人間である必要があるでしょう。ジョーはホセにどんなに殴られても自力で立ち上がらないといけない。自分の好きなように生きるというのは本当は厳しい生き方です。

 タバコによる病気で、空気の中で窒息していくような終末期は見ている方も非常に辛いです。もしタバコを吸うのであれば、「肺炎上等、梗塞上等、肺がん上等、
COPD上等、先生、途中でタオルを投げ込んでくれるなよ。」とカッコ良く言ってほしいものです。それだけの度胸と覚悟がないのであれば、少しは自分を律するか、禁煙治療をしたらどうでしょう。

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