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最近交通事故にて受傷された方で物損扱いの方が増えているように思います。
事故の処理には人身事故と物損事故がありますが、人身事故というのは人が怪我をしたりした事故のことで、物損事故というのは車や周囲の物品が壊れただけの事故という意味です。
なので、物損扱いで被害者が医療機関を受診し通院するということは日本語として間違っています。なぜ物損扱いの事故が増えているのか。それにはいろいろ大人の事情があります。警察としては、事故の処理が被害者がいる場合と比べて簡単になります。加害者としては、人が怪我をしていない扱いになるため、人身事故に比べると処罰が軽くなります。また、加害者側の保険会社としても被害者が治療する時に物損では比較的容易に治療を打ち切りにできるのでなるべく物損にしておきたいのでしょう。基本的に被害者以外の人にとっては物損事故扱いの方がメリットが大きいのです。
被害者にとっては人身事故扱いでも物損事故扱いでも、すぐに治る痛みで通院しないのであれば大きな違いはありません。ただ、事故後の症状はなかなか軽快しない方が少なくありません。後になって症状が治まらず、治療を続けたいということになった時に困ることがあります。
事故の保険のCMなどでは手厚いサポートが受けられますと宣伝されていますが、事故直後にそのようは説明をされている方は実際ほとんどいません。保険会社には物損事故で大丈夫ですよと言われていますという方が多いです。
事故後、痛みなどがあって医療機関を受診するのであれば原則的に人身事故扱いにすべきと思います。後になって揉めないために。人身事故扱いにするには警察に診断書を提出しないといけませんが、この診断書は原則受傷時の重症度を基準に記載します。骨折等明らかな損傷がなければ全治期間はそれほど長期では記載できないため、時間が経ってから警察への診断書を依頼されてもおかしなことになってしまいます。
たとえば、いわゆる「むちうち」で症状や所見として後頚部痛しかない場合、重症度としては通常1週間程度です。この診断書を事故から2週間後に書いてほしいと言われると、「事故後2週間で初診されましたが、全治期間は受傷後1週間程度です」という内容になり、「じゃあ初診時治ってるじゃん。」という変な診断書になってしまいます。なので事故後医療機関を受診するのであれば原則事故当日、事情がある場合でも3~5日以内には受診しないと診断書の記載は困難です。事故後数週も経過してしまってから初診されたのでは、そもそも事故による症状と証明することは医学的に無理でしょう。
物損事故扱いを受容するのであれば、基本自分は怪我をしていない扱いになっているということを理解していていただきたいと思います。後から後遺障害を診断してほしいなどということにはならないよう。
先日剥離骨折した左小指は何とか完治しました。今度はどうやら自分がテニス肘になったようです。まあ、この年でボルダリング頑張ればなっても仕方がないかもしれませんね。最初は少し痛いかなくらいだったので用心していたのですが、だんだん痛みが増えてきました。といってもまだひどくはないのですが、シーネを大きな鋏で切る時などに肘の外側が痛いです。
自分でなってみて実感するのですが、やはりテニス肘というのは指と手関節を伸展させる筋肉の肘側の起始部である腱部分の微細損傷が始まりのようですね。始まり頃からエコーで観察していますが、当初は軟骨側に不整な像?かと思っていましたが、最近は腱起始部に低信号領域がわずかに出現してきました。まだ病的な血流増加は見られませんが。
さてどうしようかという話です。テニス肘に対しては、すぐに完治させるような治療法は現状ありません。最初は負荷を減らして、湿布をしたりして炎症を抑えるか、ストレッチやテニス肘用バンドなどをしてみるか。最近欧米ではPRP療法といって、患者さんから採血した血液の血小板を濃縮した成分を患部に注射するという治療が行われたりしています。
PRP療法は日本では保険適応になっておらず、行うとしたら自費診療になりかなり高額なのですが、テニス肘に対するPRP療法は文献では劇的に効果が高いという印象はありません。費用的にそこまでする人が日本でどれくらいいるかな、という印象です。
炎症が起こっていて痛みが強ければステロイド注射は短期的にはかなり有効です。ただ、ステロイド注射も長期的には根治的な治療ではないため、頻回に注射したりは避けた方がよいと思います。
その他には体外衝撃波療法などもあり、最終的には手術療法もあります。さすがに手術は最終手段ではありますが、保存的な治療でどうしても改善しない場合は成績としては優位です。
テニス肘もそうですが、腱の付着部障害というのは、肩の腱板損傷やアキレス腱障害、足底筋膜炎などもそうですがやはり年齢的な腱の変性が根本にあるものと思います。要は劣化ですね。微細損傷を生じると、その修復が順調に行われずに治るのに時間がかかるという面が強いようです。
なのでPRP療法も体外衝撃波も、修復過程を賦活化する治療が優勢になっています。
エコーで見ながら患部に注射針を刺して出血を誘導するという治療(tendon fenestration)も実際に行われています。PRP療法のように濃縮はできませんが、出血とともに免疫細胞やサイトカイン等も患部に誘導されるため、治癒過程を活性化させようという治療です。鍼治療と同じようですが、鍼治療は出血等は狙っておらず、コンセプトが異なります。日本で行う医師はあまりいないかもしれませんが、試みて悪くないかもしれません。
自分に対して、まずはテーピングとテニス肘用バンドはしてみました。やはり気持ち楽になるかなと思います。ボルダリングをする時にはテーピングとバンドを欠かさずしています。今の所それほどでもないので運動を休止する気にはなりませんが、さすがにレベルアップは目指さずしばらく現状維持を目標にしようかと思います。
診療所で超音波治療器は当ててみています。最初は何にも感じないのですが当てているうちに痛いくらいの刺激ですね。しばらく試してみようと思います。それで改善傾向に乏しければ注射針を刺す治療(fenestration)を自分でしてみようかと思います。
ここでやや疑問に思うのは、PRP療法も体外衝撃波も注射針刺入も炎症を敢えて起こす方向に誘導している訳で、それなら湿布や炎症止めは逆によくないのではないかということです。テニス肘にも微細損傷が主な病態と炎症を起こしている病態が混在しており、炎症を起こしている状態には対症療法として理にかなっているとは思いますが、どちらを優位に考えるかはその時の患部の状態で考えるべきかと思います。