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2018年8月30日 (木)

電子カルテ

 最近は電子カルテを使う病院も増えてきました。当院でももう10年以上使用しています。電子カルテについてはいろいろデモしていただいたり注視してきましたが、まだまだ実用的に満足できる物はありません。現状の電子カルテを見ていると、日本の悪い所が凝縮されているように思えてなりません。

 最も絶望的なのは、各会社の電子カルテのデータ形式が統一されていないことです。例えば家電製品で、電気の種類や周波数やコンセントの形がバラバラだったらどれほど使いにくいでしょう。A社の冷蔵庫は50Hzでコンセントの幅は1cm、B社の掃除機は60Hzでコンセントの幅が2cm、C社の電子レンジは直流電源でコンセントの足が丸いなど全てバラバラだったら家を建てるときに一体どんな電気設備を入れるでしょうか。電子カルテはデータ形式等がバラバラなのでデータの受け渡しもできず連携も困難で、もし電子カルテを他社に変えようとするとそれまでのデータは使えないとかあり得ますか?…。

 もし日本の政治家や官僚に少しでも先見の明があったら、もう少し現状が良かったのかもしれません。間違っても開発早期に携わっていたけど今のようになったとは言わないでいただきたいと思います。昨今の各省庁の不祥事を見ていると、あまり高いレベルの仕事を期待すべきでは無いのかなという残念な気持ちになります。

 診療には多くの情報が必要です。本来は株の売買でよく見るようなマルチモニターで様々な情報を同時表示しながら診察するくらいのことがしたいところです。しかし、現在の電子カルテはまるで前方の窓ガラスが50cm四方しかない自動車みたいに表示できる情報が少ないです。そもそも電子カルテの長所として謳われていることが、「前の診察記録や処方内容をマウス操作だけでコピペできますよ。」とかですが、それってネットコピペでレポートを提出する大学生にプレゼンするのと同じレベルです。

 いっそのこと日本医師会が、電子カルテを作成して供給すればよいのではないかなという気もします。コスト的に無理ということかもしれませんが、共通形式の電子カルテを大量に供給してそのデータを匿名でもよいので集めれば日々の実臨床の貴重なビッグデータになる訳で、研究機関や実臨床の様々なデータがほしい業界にはかなりの高価値でしょうからコスト的には成り立つような気がします。

 どこかに本気で使える電子カルテを作っていただける方はいないものかと思いますが、そもそも電子カルテという製品が、現在のデジタル業界には理想を実現できない難しいものなのかもしれません。

2018年8月21日 (火)

運動で痛めた方々

 世間では本当に様々な運動が紹介されています。人それぞれ色々試しているようですが、合わないことをすると逆に痛めることもあります。

 当院にご来院された実例からどんなことが起こりうるのか考えてみたいと思います。

 「介護予防リハをした後から腰背部痛が出た。」とのことで来院された方でレントゲン検査を行ったところ圧迫骨折だった、という事例があります。これは一人ではありません。整形外科医がレントゲンを見ると、こんな骨の薄い人に筋トレするのか…と恐ろしくなりますが、現状介護予防リハの事前チェックはありませんので防ぎようがないかもしれません。

 地域の体操に参加したら脇腹が痛くなったとのことで来院された方では肋骨骨折の方もいます。同じようにいきなり体幹を回す運動をしたら骨粗鬆症の方では折れる可能性があります。参加することは大変良いことなので、最初から張り切って思い切りやらず、恐る恐る軽い体操から始めてみた方がよいと思います。

 足を内外にスウィングして股関節を開排する機械が流行ったことがありました。開脚ストレッチというのが流行した時期ですが、この運動や機械で股関節が痛くなった方は多かったですね。股関節というのは、関節包や周囲の筋が硬くて開排できない場合とは別に関節や骨自体が張り出したり構造的に開排が無理な場合があります。構造的に可動域制限のある方がいくら運動して広げようとしてもインピンジメント症候群になってしまったりします。骨格的に大丈夫か考えてから行うか決めた方がよいと思います。

 最近は踵落とし運動というのもあります。これを始めたところ踵が痛くなったという方では足底筋膜炎という疾患を発症してしまった方もいます。いきなりガシガシ踵を落としていたら痛くなることもあり得るでしょう。足底筋膜炎は発症すると数ヶ月から半年、一年と痛いこともあり注意が必要です。これも最初はクッションのある靴やうち履きを履いて軽めに行ってみた方がよいかもしれません。

 ジムに通い始めてダンベルを重たくしたら肩が上がらなくなったという方で、腱板損傷や上腕二頭筋腱皮下断裂を生じた方もいます。肩はもともと腱板等が弱くなっていたり変性断裂している方も少なくありません。急にウエイトを上げずに、慎重に行った方がよいです。肩を上げすぎない位置で行うなどの工夫も必要かもしれません。

 ダイエットの為にジョギングを始めたら膝が痛くなったという方も少なくありません。過体重でいきなり走ったら膝が痛くなることは避けがたいかもしれません。ダイエットのためには、食事療法と運動療法をしっかり組み合わせることが大切だと思います。食事はそのままで走ってやせようというのは明らかに無理があります。運動するならまず間食を止めたり禁酒したりしてから行ってはどうでしょう。

 どんな運動にもリスクはあるものです。運動自体は何かしら行った方がよいと思いますが流行だからと行うのではなく、自分に向いている運動を取り入れて、何事も少しずつ向上するようにした方がよさそうです。

2018年8月 6日 (月)

忘れた頃に

 腰痛の方は整形外科外来に毎日たくさん来院されます。どれくらいの人数を診察してきたか分かりません。1日5人としても年1000人以上、1日10人くらいとしたら年2000人以上でしょうか。もっと多そうな気もしますが、どうでしょうか。

 腰痛も、明らかに運動不足の方から変形等が強くて根治的には治らない方、心因性の腰痛の方など様々です。一概に腰痛に対してはこうすれば良いと言うのはなかなか難しいものです。

 数多くの腰痛の方の診察をしていると、どうしても毎年必ず、悪性疾患による腰痛の方に出会います。癌の転移や血液疾患による腰痛等の方です。毎年、忘れかけた頃に悪性疾患を診断し、きちんと診断する必要性を再認識させられます。

 悪性疾患による腰痛も、初診時には普通の腰痛と区別することは困難なことが多いです。かなり長い間腰痛があり、改善することなく徐々に悪化し、安静時痛や夜間痛なども生じてきたという様ですと典型的な悪性疾患による腰痛の経過で、最初から癌の転移などを疑います。ただ、それほど典型的な場合は比較的少ない印象です。

 先週から腰痛を生じ、足がしびれてきたとのことで、ヘルニア等かな?と思いつつ腰椎X-Pを行ったところ悪性腫瘍による骨破壊と神経圧迫所見という場合もあったりします。転倒してから腰痛を生じ、レントゲンで圧迫骨折と診断し治療を開始して、なかなか良くならずMRIを行ってみると悪性腫瘍のある部位での圧迫骨折だったということもあります。

 急性腰痛でレッドフラッグがなければ最初はレントゲン検査は必要ない、という指針が出ていますが、脊椎の悪性腫瘍患者の64%にはレッドフラッグがなかったという報告もあります。そのまま経過を見るべきか。精査を行うべきか。なかなか難しいところです。

 千人に一人かもしれません。万人に一人かもしれません。腰痛の場合、悪性疾患の可能性について常に頭の片隅に置いて診療に当たっています。なるべく早くに診断と治療に繋げるために。それでも早期診断は難しいのですが。

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