外傷後最初の出血は出しちゃった方がよいかも
指を切ったり怪我で皮膚が割れたり犬やネコに噛まれた時に、すぐに傷を押さえて閉じてしまう人がいます。学校や保育園では、養護の先生や看護師さんがすぐにテープで傷を閉じてしまうこともあります。
これは主に臨床的な勘ですが、怪我してすぐの出血は止めずに外に流してしまった方が良いように思います。特に砂利の校庭で転んだ傷とか木にぶつけて割れた傷とか噛み傷では、傷の中に異物や細菌が高頻度で入っていますので、すぐに塞いでしまうと化膿する可能性が高くなるように思います。また、傷の中に血腫(血の塊)ができるとそれが吸収されてなくなるのに時間がかかります。
もちろん一般の方は出血すると大変だと思ってすぐに止めないといけないと思ってしまうかもしれませんが、診療所受診で済みそうなレベルの傷では太い動脈が切れていない限り、初期の出血で大変なことになったりはしません。
むしろ傷が出来たら水道水で流してなるべく異物や細菌が中に残らないようにした方が良いと思います。その時に傷が開いていてどんどん出血しても、化膿するよりはだいぶましです。
傷をすぐに塞いで数日後や1週間後に広範囲に腫れてきて受診される方が時々いますが、それは傷から細菌が入り蜂窩織炎や化膿性の腱鞘炎、リンパ管炎などを生じている為で、治療がより難しくなります。麻酔をして傷を切り開いて拡大し内部を洗浄したりしてそのまま開放創といって閉じないように工夫して頻回に受診してもらい、抗生剤を内服したり点滴したりもします。場合により病院へ依頼して入院の上で点滴したり手術をしてもらう必要を生じることもあります。
整形外科医は傷が開いているより閉鎖した傷が腫れている場合の方が怖く感じます。傷が出来た時に出血するのは、凝固させて傷を閉じようとする生体反応と、内部に入った異物や殺菌を流し出すためと両方あると思います。なので、初期の出血は慌てずに流してしまい、できれば流水できれいにしてその後に出血が止まらない場合にガーゼや布で押さえて止血するという2段階で対処していただけますと幸いです。ひどく出血が続いていないで自然に止まっている場合は、無理にテープで閉じたりしないで少し開いた状態で来院していただいた方が無難です。
ちなみに拍動性に(動脈性に)出血している場合はほっておくと止まらない場合があるので少ししたら積極的に押さえて止血した方がよいですが。