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2019年9月 7日 (土)

巻き爪(陥入爪)のガター法

 爪の角が脇の皮膚に食い込み痛みや化膿を起こす状態を巻き爪(陥入爪)と言います。最近の学生はカバンが非常に重いためか扁平足や開張足が多いためか陥入爪の子が多いように思います。軽い陥入爪であれば処置をしたり抗生剤を使ったりテーピングしたりで改善する場合もあります。陥入爪が続いてくると肉芽を形成して慢性化し、なかなか治らない状態に陥ることもあります。

 慢性化した陥入爪に対しては、爪にワイヤーを入れたりプレートを貼って脇を上に上げる治療や爪の生えてくる母体の所まで端を少し切って母体の所をフェノールで焼いて爪そのものの幅を減らす治療などがあります。ワイヤーやプレートは金属が爪に付いているので保持できなかったり処置が必要だったり、フェノール法は幅が永続的に狭くなってしまうという問題点もあります(最終的にフェノール法が必要になる方もいますが)。

 うちの子も陥入爪になりなかなか治らずいろいろ試しましたが、結局ガター法という小手術を行い治まりました。ガター法というのは爪の母体までは切らず、爪の見える根元付近までやや斜めに切って爪が巻かないようにする治療ですが、試行錯誤した結果切った爪の脇が再度食い込まないようにチューブを加工したものを爪の側面に手術糸で縫着するように工夫しました。こうすると、手術翌日からほぼ痛くなくなり、日常生活動作に特に制限を生じません。特に処置も必要無く入浴時に洗えば大丈夫です。また、爪にチューブを縫着してあるので、通常チューブは数ヶ月はそのまま固着しています。爪が伸びてくれば母体は処置していないので元の爪の形に戻り爪の幅が減ったままになってしまうということもありません。伸びてくると爪を縫着している糸の位置が先の方に移動してきて、最終的にはチューブは外れると思いますが、中途半端でズレてきたりしたらチューブを縫着している糸を切ってしまえば終了です。

 この方法を行うと、症状もなくなり処置も必要無いのでしばらく再診されない方が多いので、最初のうちはどうなっているのか経過がやや心配でしたが、子供に行って家で経過を見ていましたが何の問題ないから受診の必要もないという感じでした。

 当院では陥入爪の通常の診察は皮膚科で、ガター法を行う時には整形外科で行っています。通常はまず皮膚科を受診していただきご相談ください。最初からガター法をご希望の方は直接整形外科を受診してください。手術は10~15分程度で終わりますが、足趾ブロック麻酔をしたりするので小一時間かかる見込みで、受診してすぐに行うことは困難です。外来が空いていればそのままその日に行うこともありますが、通常別の日の昼休みに予約でご来院いただき行っています。

 当院のガター法は恐らくかなり良い方法だと思います。自分の母趾の爪もやや巻いていますが、悪化したらこの方法で自分でやれたらやろうかな?と思っています。宣伝するとたくさん行うことになって昼休みがなくなってしまうかもしれないので敢えて広めようとはしませんが、もし他の方法で改善せずお困りでしたらご相談ください。

2019年9月 3日 (火)

リハビリのコツ

 リハビリテーションをしていると、順調に改善する方と、一向に改善傾向のない方とがいます。急性期か慢性期か、改善できる状況か現状維持が目標となる状態かなど様々な要因があり一概には言えませんが、リハビリを効果的に行うために一つ大切なことがあるような気がします。

 自分自身、病院勤務医の時にはもちろん骨折や脊損などの外傷後、脊椎や人工関節の術後などのリハビリを行い、障害者センターでは各種障害のリハビリも学び、診療所では慢性疾患のリハビリから介護、在宅のリハビリを診てきましたが、その上でリハビリのコツとして一つ確信に近いものがあります。

 昔、とある病院に勤務していた時、競馬のジョッキーが落馬して救急に運ばれてきたことがありました。指の骨を開放粉砕骨折しており緊急手術をしました。ちょっとマニアックな手術ですがワイヤーで創外固定をした上にゴムで牽引をかけるという方式をして術後には痛みの範囲で自動運動をしていただくようにしました。

 一般の方では最初は普通痛かったり不安だったりで怖々少し動かせるかどうかなのですが、術後しばらくして病室を訪れると、「先生、こんなもんでいいですか?」と言って深く患指を曲げて見せていただけました。プロスポーツ選手はすごいなと思いましたが、そこに一つ大きなヒントをいただきました。

 障害者センターに勤務していた時には、ほとんどの方が脊髄損傷後や切断後の方だったのですがやはりリハビリの進む方とそうでない方にはある傾向があるような気がしました。

 リハビリをしていると、なるべく頻回にリハビリをしたい、長い時間したい、マッサージも受けたいというように自分以外の誰かに良くしてもらいたいという意識の強い方と、リハビリで教えてもらったことを生かして自主的に進んでいこうとする方とがいます。それは明らかに自主的に進んでいこうとする方の方が圧倒的に効果が出ます。

 リハビリが効果を生むコツというのは、自主的な取り組みへのモチベーションを持つこと、リハビリ終了後をイメージすることだと思います。リハビリを早く卒業したい、家事やスポーツや趣味活動に積極的に取り組んでいこうという意識を持つなど、リハビリ終了後のイメージを持っていないと漫然とリハビリを行うことになり効果が乏しくなってしまうと思います。ずっとリハビリをしたい、なるべくたくさんリハビリをしたい、マッサージも受けたいという受け身のままでいると、どれだけリハビリを増やしても改善することは難しいです。逆に多少無理でもスポーツに復帰したり楽器をしたり趣味を再開したり、仕事をしたり、医師としてブレーキを踏みながら診療しないといけないような方は予想外に良くなったりします。

 介護リハビリが始まってから、とにかく単位の許す限り頻回に行い、ずっと継続することが大切なような風潮がありますが、医師としては財政的な面も含めて本当にそれでよいのでしょうかと疑問を感じる今日この頃です。リハビリとしてどこまで介入するのかも含めて、早急に議論が必要なのではないかとも思います。

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