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2019年10月29日 (火)

Bertolotti症候群

 最近、慢性腰痛は医学的には原因がはっきりしない症例が多いという情報が多くなっているように思います。これには、確かにそうかなという面と、そうでもないのではないかなという面と両方の考え方があるように思います。

 慢性腰痛というのは症候名で、診断名ではないのでどこから慢性的に腰痛を生じているかが問題なのですが、診断の確定が困難なことは確かに多くあります。

 診断困難な慢性腰痛では、心因性腰痛やストレス性の腰痛、内臓痛など他科領域からの腰痛などの鑑別が必要です。心因性の腰痛であれば、通常の消炎鎮痛剤などは効かず、と言うか最初から「鎮痛剤は効かない、嫌。」と言う方が多いです。逆に痛み止めはどうしますか?という質問をすると、心理的な面をある程度推測できるような気がします。心因性の疼痛であれば心理的なアプローチなどが必要になることもあります。リハビリやマッサージで効果が出るのはそこに心理的な効果があることも一因だと思います。他科領域からの腰痛では、他科への紹介を含め対応が必要です。

 整形外科領域ではあるけれど診断が難しい場合もあります。腰殿部痛が続いたり繰り返している方の中で、一番尾側の腰椎と仙椎や腸骨の間がつながっていたり関節を形成しているような状態になっていることがあります。一番尾側の腰椎の横突起という所が肥大して仙骨上方と関節形成をしている状態をBertolotti症候群と言います。この状態で腰殿部痛を生じていると、やはり保存的な手段で根治的に改善することは困難です。根治的には関節形成部位を切除する手術で改善したという報告があり、慢性化していて厳しい場合は手術の検討が必要です。ただ、手術のお話をしても「そこまでは考えていません」という方がほとんどで、鎮痛剤やブロック注射やリハビリで症状緩和をすることが多いです。このような構造的問題で腰痛が慢性化している場合も、診断がそこまで至らずに慢性腰痛に入れられていることが少なくないように思います。また、診断したとしても根治的な治療までは希望されないことも少なくありません。診断するには、その局所にブロック注射して一時的に症状が改善するかなどを確認する必要があります。現状、その部位にブロックしてくれる病院の専門医は多くはないと思いますが。その他にも、強直性脊椎骨増殖症による腰痛なども診断に至らず慢性腰痛に入れられていることが少なくないように思います。仙腸関節疾患による腰痛も、きちんと診断して手術を行うと治ることもありますが、仙腸関節の手術をされている方は適応の方の中でも非常に少ないように思います。強直性脊椎炎や脊椎関節炎という疾患の場合は抗リウマチ薬を必要とすることもあります。

 慢性腰痛をどこまで診断できるかという問題は、慢性腰痛に対してどこまで確定診断を目指すべきかということや、診断して根治できるのかということ、強力な薬を使ったり手術を受けてでも根治的な治療を受けたいかどうかなどを含んでいるので単純に何割診断できるかという話では収まらないように思います。

 多くの方が抱える腰痛というものは、本当は単純なものではありません。症状を緩和することが目的なのか、診断を確定することが必要なのか、手術をしてでも根治的に治療を行う希望があるのか、などなどよく相談していくことが大切かと思います。

2019年10月 3日 (木)

農福連携

 先日、「農福連携」という言葉を初めて知りました。農は農業のこととすぐに分かりますが、福は幸福などの福ではなく、福祉の福です。農業と福祉がどう繋がるのか、まだ詳細なことまでは知りませんが自分の中で「これだ」という感覚が芽生えている部分があります。

 以前から、診察している中で農業をしている方の強さとか、自律した姿勢とかに尊敬の念を抱いていましたが、その一方で太陽の下で自然を相手にする仕事に本来の人の営みのようなものも感じていました。

 農福連携というのは、農業に障害のある方や発達障害などの方が従事したり、最近では引きこもりの子供や大人が関わることによって発展的な取り組みができるという連携のことを言うようです。いろいろ厳しい側面もあるのでしょうが、閉鎖的になりがちな環境から厳しくとも太陽の下での生活へ出て行って食にも職にも自ら関われるようになれれば何か良い循環が産まれるような気がしてなりません。

 昔鶴川にも田んぼがたくさんあって、その中でこういう取り組みができていれば今の窮屈な世の中も少し違っていたのかなと思います。この辺りでもまだ遅くないのか。東京から離れたところでだけこういう取り組みが進んでいくのか。

 医学的な診療だけでは世の中あまり良くなっていかないような気がして、これからどうしていこうか秋の夜長に思案してしまう今日この頃です。

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