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2020年6月 8日 (月)

火事の見物人に放水

 

 湿布というのは、通常消炎鎮痛剤を皮膚から染みこませて患部の炎症を抑えるという目的で使われる物です。なので、使うとしたら損傷部位や炎症を起こしている部位の直上に貼るのがよいと思います。

 診察の時に湿布を貼っている部位を見ると、原因部位とは違う所に貼っている方が少なくありません。多いのは、五十肩など肩関節の疾患で上腕に湿布する方、腰椎から下肢への放散痛で下腿などに湿布している方をよく見ます。そういう使い方を見ると、消防士が火事現場に行って、燃えている家ではなくて顔を熱がる見物人に放水しているようだなと思います。まあ症状は緩和するかもしれませんが、そっちじゃない感が拭えません。五十肩の様でしたら、鎖骨の外側に肩甲骨の端があるのですが、その先端付近やや前を中心に貼ることをお勧めします。坐骨神経痛などでは根本原因は腰椎の事が多く、骨盤側のこともありますが少なくても下腿などは上から放散している痛みです。そういう場合、基本的に下肢に湿布はしないでよいのではないかと思います。末梢神経の終末を抑えるのかもしれませんが、基本的には神経痛に対する薬を使うか、薬以外の治療や精査をしてみるとよいかもしれません。

 湿布というのは消炎鎮痛剤を面で皮膚から浸透させているので、染みこむ薬剤の量は貼っている湿布の面積に比例するはずです。たくさん貼ればそれだけ消炎鎮痛剤が多く染みこむので、あまり一時にたくさん貼ると、血中濃度が上昇することが知られています。たくさん貼ると調子良い方は、もしかすると全身的に鎮痛剤が充分量拡散して内服と同じような効果を得ているのかもしれません。なので場合によっては消炎鎮痛剤を継続して内服した場合のように腎機能障害等を生じることもあり得ます。

 湿布は市販化が進んでいて、近い将来処方薬から外れるのではないかと思います。ドラッグストアでは今でも総合感冒薬や消毒薬をたくさん販売することに何の疑問もないようなので、湿布も使いすぎていると指摘してくれることはないでしょう。

 湿布ならかぶれるかどうかくらいでどこにどれだけ使っても大丈夫と思っている方がほとんどだと思いますが、もし使うならきちんとした部位に、必要最小限使用することをお勧めします。湿布の使い方は実は年代によって大きく違います。若い方は節約の面もあるのでしょうが、必要最小限使ってくれることが多いですが、中高年以降、特に高齢の方は異常にたくさん使う方も少なくありません。処方を制限すると怒る方もいますが、湿布といえども薬なので必要最小限にすべきです。

火事の現場で水をかけるなら顔を熱がっている見物人ではなく燃えている家にしましょう。

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