上からの景色、下からの景色
コロナ窩の現在世の中に対して様々な見え方があると思いますが、社会の混乱期には上層部と末端の人間でこれほど見える景色が違うのかというのを実感しました。銀座の近くに住んで関東大震災も東京大空襲も生き残った祖母が昔話していた先の大戦中の日本もこんな感じだったのかもしれないなと思っています。
今年、特に想定外のことが何か起こったという訳ではありません。強いて想定外とすれば、想定していた感染症に比べると致死率が低く蔓延したということでしょうか。想定を上回っていたのはこの国の準備のなさでしょうか。
GO TOキャンペーンのゴタゴタを見ているとまるでミッドウェイ海戦の様です。魚雷を付けるのか爆弾を付けるのか。出撃するのか待機するのか。
今年も結局不思議なくらい例年通り働いてきました。テレワークとか自宅待機とか他の星の話かと思うくらい淡々と診療を続けています。もう発熱や感冒様症状の方をどれだけ診たでしょうか。テレワークという名の疎開ばかり推奨していて、戦地の兵隊にどうしろというのでしょうか。
この国は、やはり戦に勝てない国なのだなと思います。戦に勝つには敵の戦力、自国の国力を冷静に分析し、勝つための戦略を立て、それを実行可能な作戦に落とし込み、実際に作戦を遂行する必要があります。現在までどれもきちんとできていない。これほどできないものかと驚きます。
今はどうやら好景気のようです。いつの時代も戦争中は一部で景気が良くなるものです。国の中枢には武器商人のようにここぞとばかり儲けようとする人達が群れています。一方で末端には生活に困窮する人々が増えているのに。ホタルの墓のような事態が少しでも起きないとよいのですが。
現在、COVID19は指定感染症に分類されています。立場によって敵の見え方が違うため、一致団結して同じ方向を向いて戦えていません。基幹病院のICUなどは本当に厳しい戦いを強いられています。末端の診療所や保健所は、蔓延している感染症への対応がもう限界に達しています。まったく参戦しようとしない所も多々あります。非常に危険だという人もいる一方単なる風邪だという人もいます。多層的な捉え方ができなければ一致団結できないでしょう。
感染症との戦いで医師や看護師は兵隊です。兵隊は無限に居る訳ではありません。どこにどの部隊をどれだけ投入するかという戦略が必要です。自国の国力戦力の把握が全くできていない。来年オリンピックが開催されたら会場や周辺道路上の医務室にも医師や看護師が出動するのでしょうか。南国にも出征しろ、北方にも東方にも大陸にも出兵しろと際限なく戦線拡大していった過去と重なって見えるのは錯覚でしょうか。
報道というものも、混乱期になると大本営発表と良いことも悪いこともとにかく煽る報道に陥るのだなというのがよく分かりました。ワクチンというのは原疾患による死者を減らすために、ワクチンによる少数の死亡まで含めた副反応を許容するというものです。そのことが分かっているのでしょうか。諸外国では通常通り行われている子宮頚癌ワクチンが日本でほとんど頓挫している状況で、諸外国と同様に日本でCOVID19のワクチンができるような報道ばかりされていますが、始まってからの報道がもう目に見えるようです。
これからも末端では粛々と働いていくのでしょう。例年通り働き、例年通りきちんと税金を納めるのが筋なのかもしれません。こういう社会の混乱期には国に期待すること自体に無理があるのかもしれません。例え駅の構内であっても生き抜いてほしいと思います。どうやったら生き抜くことの手伝いができるのか。医療の枠だけに捕らわれていてはいけないように感じています。