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2021年11月 6日 (土)

DIP関節の化膿性関節炎

 人差し指~小指の爪から数えて最初の関節(1関節)をDIP関節と言います。この部位では、手のひら側は皮下脂肪もしっかりありますが手背側は皮下脂肪もほとんどなく、皮膚の下に伸筋腱の末節骨への付着部がありその下がすぐ関節になっています。

 なのでDIP関節の背中側に傷を生じると、関節に細菌が入りやすい構造になっています。関節は血流に乏しく免疫力が弱いため、細菌が関節内に侵入すると化膿性関節炎という状態に陥ることがあります。

 特に注意が必要なのはDIP関節付近を犬や猫などに噛まれた場合と、この部位のガングリオンを自分で針を刺して抜いた場合です。DIP関節からはよくガングリオンが発生し水疱のように皮膚が薄くなるのですが、このガングリオンは多くの場合DIP関節につながっています。しっかり滅菌できない状態で針を刺すと、細菌が関節まで入る可能性があります。

 DIP関節に化膿性関節炎を生じると典型的には赤く腫れてきて、悪化してくると指の根元や手、前腕まで腫れてきたりします。傷が治らないということで来院されることも少なくありませんが、普通の傷に見えても正確には関節へつながっている瘻孔で、重症度としてはかなり重症の部類に入ります。

 治療の上で最も考慮が必要なことは、関節機能を保てるかどうかです。関節に細菌感染を生じると軟骨面はかなり損傷されます。早期に診断し、徹底した洗浄や抗生剤投与を行い感染をすぐに治められれば軟骨の障害は軽度で済み関節機能は保たれることが多いですがそれでも発症前に比べるとDIP関節の可動域が減ったりする場合もあります。なので原則は手の外科専門医のいる総合病院へ紹介し、麻酔下に関節内の洗浄や掻爬を行い抗生剤投与を行う必要があります。

 高齢者で既にヘバーデン結節(変形性関節症)などありDIP関節の動きが制限されている場合などは、関節機能温存より感染制御鎮静化に重点を置く場合も少なくありません。もともと変形性関節症がある年代ではDIP関節は固まって動かなくなっても機能的に困ることはほとんどありません。入院が難しい場合や、希望しない場合などは、通院で洗浄し抗生剤を投与して治療することもあります。この場合、治癒までにはかなり長期間必要で、頻回に通院処置が必要となるので、通院治療をするか入院手術をするかでよく相談が必要です。通院治療の場合は数ヶ月で治まれば経過としては良好です。感染制御の面では関節が動いていると鎮静化しづらいため、創部は開放創で洗浄しながら関節としては副木等で固定します。関節が拘縮したり最終的には癒合することもありますが、感染が治まれば経過としては許容していただくしかない場合もあります。

 細菌感染が軟骨を越えて骨の中まで波及している骨髄炎の状態になっているような場合は痛んでいる骨を切除し、関節としてはワイヤーやスクリューなどで固定する関節固定術が必要になることもあります。DIP関節は完全に固まりますが、これも機能面は諦めてでも細菌感染を完治させる必要がある場合に行われます。

 DIP関節(第1関節)周囲の傷は要注意であることは心に留めておくとよいかもしれません。

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