現場の逼迫と街の回復
先日、自宅で倒れて動けなくなったという高齢の方があり救急要請しましたが出動できないので自宅に留まるようにと言われてしまいました。骨折の可能性が高いからと言うことで救急を要請して出動できないと言われたことは、診療所で診療をしていて初めてのことです。決して救急隊を非難したい訳ではありません。もう救急体制が破綻していることは身に染みて分かっているので。
COVID19の検査陽性者の発表もピークを越えて一般市民も少し安心してきている雰囲気がありますね。確かに感染のピークは越えたかもしれません。ただ、オミクロン株は軽症者が多く基幹病院の重症病棟が満杯にならなくても裾野では氾濫しており、医療の末端の現場ではこれからしばらくの期間が正念場かと思われます。
実際、入院が必要な方の入院先を探しても、病院もクラスターが発生したり職員の休みが増えたりしていて受け入れ先がなかなか見つからない状態になっています。高齢者介護の現場でも多くのスタッフが感染したり濃厚接触者になったりして従来通りのサービスが提供できない状態になっています。末端の医療関係者や介護関係者の疲弊具合と、街中で普通に闊歩している方々の時勢感覚の違いは興味深いものがあります。
危機感を煽っていると頭にくる方もいるかもしれませんが、個人的にはもう市民活動はほぼ通常に戻していいのではないかと思っています。ある程度の死亡が見込まれる疾患の流行期に経済を回すのであれば政府として行わなければならないことはもう現在の波には間に合わないワクチンや、ただただ頑張れという声援ではなくシビアなトリアージを国の責任で行えるようにすることでしょう。複数の重症、重篤な方が居てその中で一人しか救急搬送できないという状態になった時に、搬送できなかった方やそのご家族に救急隊員や対応に当たった医師が訴えられたり危害を加えられることのないような仕組みが今すぐに必要です。しばらく現場はそれくらい厳しい状態だという認識を抱いておいていただきたいと思います。
現状骨折や脳梗塞を起こしても、すぐに救急車が来ないかもしれません。搬送する病院が見つからないかもしれません。そうすると自宅に留まるしかなく、経過が思わしくなくなるというケースも少なからず生じる可能性があります。感染のピークから救急や入院の体制が平常化するまでにはある程度の期間が必要です。あと数週から1ヶ月もするとだいぶ落ち着くのかもしれません。それまでは極力救急搬送されるような事態にならないよう体調や怪我には注意していただければと思います。そしてもし救急時に対応がスムーズに行えなかったとしても救急隊や対応した医師に当たらないようにしていただきたいと思います。もし医師が責任を負ったり訴えられたり危害を加えられるようなら、最初から対応しないという選択をせざるを得ないと思います。
« アキレス腱付着部症 | トップページ | 痛風も進化している? »
コメント