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2022年11月22日 (火)

坐骨神経痛を呈する股関節疾患

 坐骨神経痛というのはあくまで症状で病名ではありません。坐骨神経痛を生じている疾患が何かを診断しないと正しい治療には結びつきません。坐骨神経は腰椎から殿部の深層を通って下肢の背側へ続いていて、殿部から下肢背側へ放散する神経痛のことを主に坐骨神経痛と言います。

 坐骨神経痛を生じる疾患としてはやはり腰椎疾患が多いです。腰椎の部分で神経が圧迫されて坐骨神経領域へ疼痛が放散する疾患としては腰椎椎間板ヘルニアや腰部脊柱管狭窄症が多いです。なので坐骨神経痛を生じていて腰椎のレントゲンで椎間板腔が狭小化していたりすべり症があったり、腰椎MRIにて神経の通り道である脊柱管という部分が狭くなっていると、そこが原因だろうと診断しがちです。

 それほど多くはないですが、骨盤側が原因になっていることもあります。坐骨神経自体の神経腫瘍や、骨盤側の腫瘍、梨状筋症候群なども坐骨神経痛を生じます。腰椎から骨盤までを1度にMRIで撮すことはできないため、腰椎の画像診断のみを行うと見逃すことがあります。

 変形性股関節症などの股関節疾患は、典型的には鼠径部から大腿付近に痛みを訴えます。歩いて患側に体重を掛けた時に鼠径部付近が痛い、大腿が痛いという症状では初めから股関節疾患を想定する場合が多いものです。

 時に、股関節疾患なのに坐骨神経痛とほとんど同じ症状を呈することがあります。殿部~大腿背側が痛いという症状です。中には下腿や足まで痛いという場合もあります。そうすると問診で症状を聞いた段階ではどうしても腰椎疾患を想定してしまいます。問診を取って腰椎疾患を想定し、腰椎のレントゲンやMRIにて腰椎の狭小化があり、脊椎外科で腰椎の手術を行われ、術後症状が改善しないということで初めて股関節疾患が想定され初めて股関節のレントゲンを行われ進行した変形性股関節症が診断され、股関節の人工関節を追加されて症状が治まったという事例もあります。

 坐骨神経痛を呈する股関節疾患を見逃さないためには、股関節を押したり動かしたりする誘発テストを実際に行ってみるしかないように思います。簡易的にはあぐらがかけるかどうかはヒントになります。あぐらがかけない、かこうとすると痛い、などがあると、股関節に問題がある可能性があります。ただ、腰椎と股関節は関連していることが多く、どちらが原因かは詳しく診察しないと判断できないことも少なくありません。判断が難しい場合、腰椎や股関節のブロック注射などが行われることもあります。

 坐骨神経痛という症状の原因には様々なものがあります。もちろん帯状疱疹や下肢動脈閉塞症も。すごく稀ですが頚椎疾患で坐骨神経痛様症状を呈していた方もいました。その場合、腰椎ではなく頚椎を疑うきっかけは画像ではなく腱反射でした。大切なのは画像所見から入らないこと。あくまで様々な所見を取ってその確認の意味で画像を見ることです。問診、視診、触診、身体所見という基本的診断技術を常に研ぎ澄ましていないといけないなと思います。

2022年11月16日 (水)

自然経過の時間感覚

 整形外科的な怪我や病気について、医師側と患者さん側で認識が異なる一番の問題は経過に対する時間の感覚かもしれません。

 最近は便利な世の中になり、多くのことがすぐにできるようになりました。食べ物もレンジでチンすればすぐにできますし買い物もネット上で購入すれば翌日には届きます。病気についても医学が進歩してすぐに治るようになっていると思っている方が少なくないと思います。確かに病気に関しては治療法も進化し良い薬がたくさんできて昔は難病だった病気も順調に治るようになってきています。ただ、怪我等については多くの場合身体の修復時間に依る為、すぐに治るという訳にはいきません。昔に比べると手術的な修復技術が進歩しているので、手術による修復が適するような外傷は回復が早くなりました。また各種保存療法や機能訓練等も進歩しているため回復が早まっている面はあります。

 一方で手術などに至らず基本的に自然経過を診るような怪我や病気の場合、自然経過でどれくらいで治ってくるのかは把握しておくとよいかもしれません。

 例えば手首の骨折で、初診後1週間で再診されレントゲンを撮って安定していますとお話しすると「まだ固まっていないの?」と驚かれる方は少なくありません。医師としてはその驚きに驚く訳ですが、骨折部が癒合してくるのは子供で数週から、大人ですと12ヶ月からかかるのですが、医師としては例えば人がロケットで月に行くのに、出発後10分で「まだ着かないの?」と言われているような感覚になります。

 純粋なぎっくり腰(椎間板ヘルニアや圧迫骨折等の器質的要因を伴わない急性腰痛)の場合は大抵12週間以内に治まることが多いです。これも医師側からすると、「それほど時間が掛からずに治るので経過を診てください。」というイメージになってしまう傾向がありますが、患者さん側からすると「今すぐか12日で治してよ。」というイメージのことが多いです。なので最初に医療機関や接骨院に行ってみたけれど治らないということで2カ所目の医療機関として発症後数日で来院される方も少なくありません。医師からすると、「数日で転医してしまうとどこまで検査したり介入したりすべきか」と悩ましく思われます。数日でレントゲンを撮り直すのもよくない気がしますし、処方を変えるのも早いかもしれません。骨折の疑いや神経障害がありそうな場合は再度レントゲンを行ったりMRIを行ったりしますが、診断として急性腰痛に矛盾しない場合はまだしていない治療(ブロック注射や他系統の投薬、リハビリの開始など)をしてみるか、一方で追加での介入はしないでもうしばらく経過観察をするという選択も自然かもしれません。医師の間でも発症時の対応は様々です。最初から積極的に介入すべきという先生は初診からリハビリを入れたりブロック注射等をしたりするでしょう。一方でぎっくり腰であれば自然経過で改善するのでなるべく薬を使ったり注射をしたりせずに徐々にストレッチしたりして自然に治めた方がよいと考える医師もいます。どちらがよいか一概には言えないかもしれませんので患者さんの希望を中心によく相談となります。因みにうちの妻は時々ぎっくり腰になりますが、神経障害などがなさそうであれば基本放置です。やはり数日~1週間くらいつらそうですが自然に軽快します。自分自身はぎっくり腰の経験がないので自験例は分かりませんが。

 五十肩(石灰沈着や腱板損傷や炎症性疾患などのない純粋な五十肩)では、自然に軽快するまでに数ヶ月から長いと12年かかります。その間にどれくらい肩が動かなくなり日常生活動作や仕事で困るかにより治療は相談することになります。これも医師によって方針が異なるものです。積極的に介入する方針の先生は初診時に全て注射するという方もいます。一方では腱板損傷や石灰沈着などがなければストレッチ等を指導して経過観察とする医師もいます。これもそれぞれの事情や希望により相談して決めるとよいかもしれません。因みに私の場合は小さな石灰沈着が腱板部にできた時、基本放置しましたが完全に症状がとれるのに1.5年かかりました。

 テニス肘も、自然経過は長いことも少なくありません。自然経過では長いと数ヶ月から1年くらいでしょうか。これは日常的にどのくらい負担が掛かっているかどうかによるところも大きいです。テニスやゴルフなどをしながら、大工さんや植木職人の方、運送業や引っ越し業の方などはなかなか治らない場合も少なくありません。因みに私の場合はスポーツで痛めて、運動をせずに自然経過に任せたところ9ヶ月くらいで治まりました。疼痛が強い場合、ステロイド注射が一番効く場合が多いですが、腱自体が弱くなったりする副作用も考えられますので症状により相談となります。長引く場合総合病院へ紹介し手術等を検討することもありますが、大抵ステロイド注射を繰り返して納めるということになるようで手術に至ることはかなり少ないです。

 指の骨折や突き指も、患者さんが思うより完治するまで期間が長い傾向があるかもしれません。数日から12週で治ると思っている方が多いように思いますが、数週~1~2ヶ月以内で治れば比較的順調かと思います。剥離骨折を伴うような損傷の場合、大人では数週間では治らないものです。よく痛いから動かさないようしていたという方が、関節が固まってしまって(拘縮)長引くということがあります。骨傷の具合により、固定する時期と可動域訓練をするべき時期とがありますので、経過により固定するか動かすかなど相談しながら経過を診るとよいかもしれません。基本指の場合は骨が固まってから動かすのではなく、固まる前から可動域訓練をしていく必要があります。因みに私の場合、バスケをしてよく受傷する中節骨基部の剥離骨折になったことがありますが、1ヶ月半位で治りました。1ヶ月を超えると、痛みが取れるのかどうかやや不安になる気持ちが分かりましたが、いつの間にか何ともなくなるものですね。因みにテーピングもしてみましたが、テーピングは剥がす時に骨折部が痛いというのは自分でしてみないと分からなかったかもしれません。

 損傷系の疾患では、一般の方が直ぐ治ると思っているより経過が長いことが少なくありません。一般の方がなかなか治らないと言っても、医師側は経過としては問題ないと思っていることもよくあります。メディアや民間療法などで、「これで直ぐ治る」とか「これだけで解決。」とかいう宣伝をよく見ますが、様々な症例を診ている人間であればそれほど単純な言葉な使えないものと思います。定型的な治療法もありますが、多くの場合ご希望も含めてどのような治療を行うか相談をしていただければと思います。

2022年11月 3日 (木)

第8波の前に

 残念なことに第7波が十分引いていく前にもう第8波が押し寄せ始めたかもしれません。12月くらいから始まるかと思っていましたが、11月初めから感染者数が増加傾向に転じるとは。まあ人の活動を活発にする対策を積極的に行っている訳ですから仕方が無いのかもしれません。さらに残念なことに政府は2類相当の分類を変えず、人々もマスクやアルコール消毒の習慣をそのままにして来年の春まで過ごすことにしたらしいですね。もう社会を平常に戻したいのかこのまま永遠にコロナ対策の世の中を過ごしていくのか。

 今日は町田市医師会の休日当番でした。今日来院されたのはほとんどが発熱の方でした。多くの方が、一度自宅で新型コロナ用の抗原定性キットを行い陰性だった上で受診されていました。その場合国の指針としては医療機関ではインフルエンザの確認のみをして対応すればよいようになっています。しかしまだインフルエンザは少し発生しているものの流行しておらず、ご家族がコロナで療養中など、臨床的にはコロナの方が疑われる方が多い印象でした。相談の上コロナとインフルエンザの両方を検査した方は、ほとんどがコロナ陽性でした。

 今日だけの印象で判断すべきではないかもしれませんが、やはり自宅で一般の方が抗原定性キットをした場合の陽性率はかなり低いのかもしれません。原因の一つとしては発症してすぐに検査していることがあるように思います。発熱して直ぐに検査しても、まだ陽性率は上がっていないかもしれません。また、市中に出回っている抗原定性キットのうち、唾液で行う検査キットは使わない方がよいものと思います。どちらかというと唾液のキットは流通禁止にした方がよいのではないかと思います。鼻腔で行うキットでも、自宅で一般の方が行うとやはり十分に検体を採取できていないのかもしれません。

 このまま自宅でのキットを基本とした対策をすると、医療機関ではいろいろ対応が難しい面がでてくるように思います。自宅での検査では、偽陰性のまま普通に活動する方々がたくさん生じてくるかもしれません。自宅でのコロナ検査陰性の場合、医療機関では本当にインフルエンザの検査のみでよいのかどうか。逆に自宅でのキットを基本とするのであれば、いっそのことインフルエンザ流行期にはコロナとインフルエンザの両方を測定できるキットを自宅でできるようにしてしまえばいいのにとも思います。両方陰性で症状が軽ければ医療機関へ受診しないで済むことでしょう。

 これから年末へかけて、どんな状況になりどんな対応をとっていくべきなのか。どう整理していくべきか。悩ましいものです。

 

 

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