日本医療の歴史的大転換?
あまり気づいている人はいないかもしれませんが、この冬に日本の医療は歴史的大転換を迎えたかもしれません。
日本の医療制度ではこれまで、政府の誘導したい事柄に対して加算をして医療機関を誘導してきました。今年4月の診療報酬改正でも感染症に対応する医療機関に感染症対応加算を付け、マイナンバーカードを導入した医療機関に電子的保健医療情報活用加算というのを新設しました。これは日本の政治が国民目線ではなく業界団体との政治的折衝によって決まっていく典型例で、関係者からみれば加算なのですが、一般の人から見れば値上げ以外の何物でもありません。
長い間疑問に思っていましたが、加算加算していくのも能が無いので当院では今年度は感染症対応加算を取得しないことにしました。マイナンバーカードも導入すると値上げになってしまうので今年4月の導入は見送りました。
感染症対応加算は行いませんが、もちろん感染症は通常通り診察します。なので、感染症対応加算を取っている医療機関でコロナを診てもらえないからということで感染症対応加算を取っていない当院へ患者さんが流れてくるというおかしな事態になっています。
加算をしてもマイナンバーカードを導入する医療機関がなかなか増えないので政府や政府を諮問する人達やメディアは医療機関が抵抗しているからだと言いますが、まだ実用的に使い物にならないシステムを導入してお金を取るのが正しいのかどうか、メディアの方々は考えているのでしょうか。今マイナンバーカードを導入しても実際にカードを持っている人が半分、そのうち保険証情報が紐付いている人は数割程度です。もっとも、医療機関がマイナンバーカード導入の手続きをしても順番待ちで導入ができていないのが現状なのですが。そもそも整形外科で本人確認するとしたら、怪我をしていれば本人、怪我もしないで切ったから縫ってほしいという人は本人ではありません。かかりつけの医療機関で保険証情報は確認が必要ですが、本人確認がどの程度必要なのか。
さて歴史的大転換の話ですが、マイナンバーカードがなかなか普及しないので政府はあせっているのでしょうが、この12月に突然、来年の4月からマイナンバーカードを利用していない医療機関を60円値上げするという大本営発表を行いました。今まで誘導したい方向を加算するとしてきた方法を、誘導したくない方向を値上げするという方法にした訳です。
メディアも一斉に来年からマイナンバーカードを利用していない医療機関の方が自己負担が高くなりますよと政府の言う通りに報道していますが、加算方式と値上げ方式が混在してしまったらもう訳がわからなくなるのにどう整理するのでしょうか。
自己負担が安いアピールをした方がよいのであれば、感染症対応もしないほうが自己負担は安いです。在宅専門の医療機関で在宅医療を受けると高額なので、在宅支援診療所の看板は外して往診対応した方が圧倒的に安くなります。かかりつけ機能に対応しない方が機能強化加算が必要なくなります。
来年度から、「しっかり診療しているので加算はご了承下さい。」というスタンスでいくべきなのか「当院を受診した方が自己負担が少ないですよ。」というスタンスで行くべきなのか。
多くの患者さんが、加算の有無よりも近所で通いやすいとかしっかり診療しているとかいう基準で医療機関を選択していることでしょう。それなら従来の保険証を使用した方が医療機関の収入的にはやや高くなり、医療機関としてマイナンバーカードを導入する必要はカードが実用的になるまではないということになります。
日本の医療政策は支離滅裂になっていく一方です。マイナンバーカードは、本来税金や住民票などの公的なものを利用する時にマイナンバーカードがないと手続きできませんという風にすれば取得率100%になっていくことでしょう。というか先に全ての国民にマイナンバーカードを配って100%保険証情報を紐付けてから医療機関での使用を義務づけるべきでしょう。政府もお役所の方々も矢面に立ちたくないから医療機関を人柱にしているのに過ぎません。来年4月1日にマイナンバーカードの普及率と保険証の紐付け率が100%に至らなかったら全国全ての医療機関は無期限全面ストライキに突入すべきだと思います。
« スポーツバーに防護服 | トップページ | 偽関節リウマチ »
コメント