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2023年4月16日 (日)

全ての痛み止めが飲めないという場合

 整形外科をしていると、体のどこかが痛い人と毎日数十人お会いします。骨折していたりぎっくり腰だったり膝痛だったり痛風だったりその他様々な痛い方にお会いします。なのでどうしても毎日痛み止めの薬を処方しています。

 痛み止めは体によくないということはほぼ全ての方のコンセンサスになっているように思います。整形外科医としても痛み止めはなるべく使いたくないとは思いますが、痛みをどうにかしてほしくて整形外科へ来院される方が少なくないと思いますので必要最小限でなるべく副作用の少ない薬を使いたいと思っています。お薬以外の方法、特にリハビリテーションなどで症状が治まっていく方も多いので、内服は避けたいという場合は薬以外の方法をまず行ってみて経過により相談という場合も少なくありません。

 痛み止めが飲めないという方は少なくありません。一つの系統で飲めないのであれば、他の系統の痛み止めを使えばよいかと思いますが、中には全ての痛み止めが飲めないという方もいらっしゃいます。副作用情報は医師としては最も注意が必要な事柄のひとつです。これは理解しておいていただきたいのですが、原則として一度副作用の訴えのあった薬は、それを知った医師は一生その方には処方しないということです。あくまで原則ですが。昔子供の頃、喘息発作時にテオドールを飲んだらしばらくしてボコボコと体中にじんま疹が出たことがありました。もう40年くらい前のことかと思いますが、私は今後も一生テオドールは飲まないでしょう。副作用の出たことのある薬を再度処方するというのはかなりハードルの高いものです。

 痛み止めというとまずは消炎鎮痛剤を思い浮かべるかと思います。私が医師になった数十年前は痛み止めというと消炎鎮痛剤以外は少なかったので、痛み止めが飲めないイコール消炎鎮痛剤が飲めないという理解でほぼよかったものです。しかし最近は炎症止め以外にも様々な系統の痛み止めがあるので、全ての系統で副作用が現れる確率は統計学的にはかなり低いはずです。なので全ての痛み止めが飲めないという場合は副作用以外の要因について考える必要がありそうです。 

 副作用以外で鎮痛剤を飲めない原因としては、ひとつは効果を実感しないから飲まない(希望しない)という場合です。全ての系統で効果が出ないということは、通常の内服薬では無理な病態(手術適応状態、内服では十分に除痛できない状態、鎮痛剤が効果的ではない病気など)を考慮する必要があるかもしれません。そういう場合は通常の内服薬以外の方法で対応する必要があります。膝痛で半月板や軟骨が痛んでいれば、痛み止めを飲んでもすぐに痛みが止まるということはありません。リハビリテーション等の運動療法で改善するのであればそれが一番体にはやさしいと思います。内服薬の効果が期待できないレベルで変形していたりする場合、手術を検討した方がよいかもしれません。

 もう一つはストレスや心因性疼痛(最近は痛覚変調性疼痛と呼ばれています)等に対しても、鎮痛剤系統は効果が出ないかもしれません。最近は元々抗うつ剤だった薬が神経痛系統の鎮痛剤として保険適応されており、そういう系統の薬で効果のある方もいますが、逆に使用を敬遠される方も少なくありません。最も望ましいのはその方の精神的負担の原因となっている事柄が解決することだと思いますが、それが難しければ様々なつながりで負担が軽くなるとよいなと思います。カウンセリングや認知行動療法などもよいかもしれませんが敷居が高いかもしれません。経過によっては精神科受診等も検討された方がよいかもしれません。身体の疼痛に対しては運動療法やリハビリテーションは有効な場合が多いです。マッサージや鍼なども心の平穏も含めて有効かもしれません。

 高齢者の方では、薬の管理ができないと、処方されても困るということがあり薬は嫌、効かない、という方もいます。副作用で飲めなかったというようなことを理由にする場合もよくあります。もっと若い時期からずっと毎日飲んでいる生活習慣病の薬は既に習慣化されていて内服できるけれど、歳を取ってから内服を始める骨粗鬆症の薬や鎮痛剤系統は忘れてしまい飲めないということもあります。その後数年、510年くらい経ってから早期認知症と診断されることも少なくありません。認知症は早期認知症と診断されるよりずっと前から漠然とした不安感を抱いている方が少なくありません。全ての痛み止めが飲めないとか、漠然とした不安感は認知症の早期と言われるよりずっと以前の最も初めの症状発現なのかなと思うことも時々あります。

 ちなみに、全ての痛み止めが飲めないという方が骨折して手や足がグラグラになって来院された時どうするか。副木やギプスで固定すれば痛みは緩和されますが、それでもかなり痛いかもしれません。「痛み止めは副作用で飲めないようですがどうしますか?」とお聞きすることになります。医学的には一度副作用の訴えがあった薬を再処方するということは原則できないものです。

そういう場合、ほとんどの方が「痛み止め飲みます。」と言われます。そういう場合、経験上アナフィラキシーや薬疹を生じた薬以外で鎮痛剤を処方するとほとんどの方が内服可能です。

 昨今、コロナワクチン接種後の発熱等でアセトアミノフェンを使用しましたが、全ての痛み止めが飲めないとおっしゃっていた方でも、ワクチン接種後にアセトアミノフェンが飲めないという方はほとんどいませんでした。痛み止めとしては飲めなくても解熱剤としては飲めるということがかなり多いということです。最近は医療用の痛み止めがOTC化されてドラッグストアで販売されていますが、処方した薬が飲めなかった方でも、OTCの薬なら飲める方が多いです。そもそも元々副作用が多いとして慎重投与している薬がOTC化された途端に「胃に優しくてよく効く。」と宣伝されて安易に内服できることには疑問もありますが。整形外科から処方すると飲めない薬も、歯科から処方されると飲めている方も少なくありません。診療所レベルで全滅している方でも、病院から処方された場合複数の鎮痛剤を組み合わせて全て飲めているというようなことも稀ではありません。

 鎮痛剤が全て飲めないという場合、それが副作用によるものなのか、希望しないという意味なのか、心理的要因がないかどうか、管理の問題ではないかどうか、手術など検討すべき時期なのではないかどうか。などなどいろいろな配慮が必要なのだと思います。

 

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