なんとなく痛い
整形外科医にとって、なんとなく痛いという患者さんの訴えは逆に不安になります。
そういえばあの癌の転移の方も最初はなんとなく痛いと言っていたな、とか、骨肉腫の子供も膝がなんとなく痛いと言って診療所にやってきたな、とかいう記憶がふと頭をよぎるからです。
なんとなく痛いというのは発症もはっきりせず痛いのかどうかもあやふやな表現で、痛みの原因を身体的な面でのみ調べればよいのかどうかも判然としません。もしかしたら心が痛がっているのかもしれません。
なんとなく痛いという場合、身体的にも精神的にもより深く鑑別を考える必要があります。痛い部位の所見を確認して、そこに明かな原因があればその治療を行って経過観察でよいとは思います。ただ経過によっては早めにいろいろ精密検査を行う方がよい場合もあります。初診時の投薬には、その薬への反応がどうかを診ているという面もあります。炎症を抑えて改善するのか、薬に対する副作用への不安感がどうなのかなどなど。もし薬に対する不安が強いようでしたら、何か日常のストレスや不安を薬に対して表出しているのかもしれません。
痛みの強さは、疾患の重症度とは相関しません。激痛で身動きできない方でも、疾患としては軽症のこともあります。逆になんとなく痛い状態でも診察しながら今生の別れを覚悟しつつ基幹病院へ紹介状を記載することもあります。
日々何十人も痛い方にお会いする中で、なんとなく痛い方にこれまでどの位お会いしたことでしょう。その後心身共にすっきり軽快されているとよいのですが。
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