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心と体

2018年12月 2日 (日)

珍しい日

 先日整形外科の診療所としては珍しい日がありました。1日のうちに副甲状腺機能亢進症の方と副甲状腺機能低下症の方が来院されて院内検査で高カルシウム血症と低カルシウム血症を確認しました。どれくらい珍しいかは一般の方にはよく分からないと思いますが、20年以上整形外科の外来をしていて今までにあったかどうかというレベルです。

 副甲状腺というのは首の前方、甲状腺のあたりに通常左右2つずつあって、骨の代謝や血液中のカルシウム濃度等を調整しています。副甲状腺の病気は市の健診ではほぼ発見できず、一般の内科の先生もほとんど認識がないかもしれません。症状としては体調が悪いとかだるいとかふらつくとか、お腹の具合が思わしくないとか医師からすると不定愁訴としか思えないような現れ方をします。骨粗しょう症と診断されてる方の中には、副甲状腺疾患の方が含まれていることがあるので注意が必要です。積極的に副甲状腺疾患を疑ってカルシウム濃度や副甲状腺ホルモンの値を測定しないとなかなか診断にはつながらないと思います。腎結石や脳のCTでの石灰化などにより診断されることもあります。

 最近は骨粗しょう症の診断、治療を行うときにカルシウム濃度を測定するので、たまに偶然発見することがあります。副甲状腺疾患には、原発性と続発性、偽性のものなど幾つか種類があり詳しい診断と治療方針は内分泌内科の専門医へ依頼することになります。

 原発性の副甲状腺機能亢進症の場合、根治的な治療としては亢進している副甲状腺を切除したりします。年齢やカルシウム濃度などにより、手術はせずに経過観察となることもあります。副甲状腺機能低下症の場合はビタミンDを投与したりします。当院で経過観察する方は、内分泌内科へ紹介受診し、手術適応はないと言われてカルシウム濃度も許容範囲の方が主となります。主には骨折の予防やカルシウム濃度のチェックで、骨粗しょう症の経過観察と似た状態になりますが、使用する薬剤には注意が必要です。

 日々外来診療をしていると思考がワンパターンに陥りがちですが、珍しい疾患も常に念頭に置いて診療に当たらないといけないなと再認識させられた1日でした。

2018年11月16日 (金)

ビタミンDの測定について

 10月から骨粗鬆症に対してビタミンD25OHVitD)の血液中濃度が保険で測定できるようになりました。日本人では多くの方でビタミンDが不足していると言われており、健常と思われる日本人の成人でも5070%はビタミンD欠乏と判定されるという文献もあります。

 骨粗鬆症は骨が弱くなり骨折しやすくなってしまう疾患の一つで、高齢になってから骨折を繰り返すと疼痛や運動機能の低下により要介護状態になってしまう原因として重要な疾患です。大腿骨頚部骨折の予後(生存率)は胃癌などより悪く、自立した老後を過ごすためには骨粗鬆症の予防と治療は生活習慣病と同じくらい大切です。

 治療としては骨折をきちんと防ぐには骨粗鬆症専用の薬が必要ですが、カルシウムやビタミンD が不足しているとそれらの薬の効果も弱くなってしまうためカルシウムやビタミンDも併用する場合が多いです。また最近は効果の高いビタミンD製剤があり、ビタミンDの処方のみで経過観察していただくことも少なくありません。

 今まではビタミンDを測定することが出来ませんでしたので、血液中や尿中のカルシウム濃度を測定したり骨代謝マーカーというものと測定したりして調整していました。これからはビタミンDを測定できるため、普段の食生活の中でどれくらい不足しているのかがよく分かるようになりました。測定は基本治療前の1回です。なので、治療は考えていないけれどビタミンDの検査だけ受けたいという場合は保険で検査を行うべきではないかなと思います。

 ビタミンDの測定値は夏に高くなり冬に低くなるという傾向があります。これは日照時間の影響で紫外線曝露時間等が影響するためで、同じように緯度の高い地域の方が低値になる傾向があるようです。これから冬になると、より一層食生活でもビタミンDを摂取して日向ぼっこをした方がよいかもしれません。

2018年11月11日 (日)

学校イップス

 最近、ブログの筆が止まっていました。その間こんなこと書いてよいものか逡巡していましたが、やはり同じように思い悩んでいる方も少なくないのではないかと思い、書いてみることにしました。

 この頃は不登校のことばかり考えています。事情は察していただければ幸いです。最初の頃はやはり親として狼狽し右往左往して何とか元通り通学できないかと考えましたが、今ではもう別の道を行くのも良しと思えるようになりました。

 予兆のうちは時々頭が痛いとかお腹が痛いといって休む程度でしたが、ある日「もう行かない。」と言って全く行かなくなりました。何とか頑張って復学しようと思いましたが、ある時まるでイレウスのような腹部の激痛を訴えて病院に入院して、そんなにつらいのかと気づかされました。
 もう無理に行かなくていいよということになってからは、日々元気に過ごしています。学校に行こうと努力したり考えたりすると体が動かなくなったり様々な愁訴を生じますが、そういうプレッシャーがなければ普通に活動もでき笑顔でいることもできます。

 なので精神的に病んでいる状態での不登校とは違うものと思います。もちろん正確には精神的な要素や発達面での問題等も完全には否定できませんが、それはまるで学校に対するイップスのようだと思うようになってきました。

 神様はこれに備えるために自分をひどいイップスにしたのか。

 この歳になって、初めて何で30年も前に自分がイップスを経験したのか神様の意図を理解しました。イップスは自分史上最大の暗黒時代かもしれないほど悩まされました。幼稚園の時に始めたテニスで、大学になってからサーブとスマッシュとフォアハンドストロークが全く打てなくなってしまった時には本当に目の前真っ暗でした。

 イップスはゴルフや野球で有名ですが、それまでできていたプレーが怪我などではなく自分の体をコントロールできずにプレーできなくなってしまう状態のことです。その動作以外の普段の生活には全く支障はなく、私の場合もバックハンドストロークは普通に行うことができました。なので、学生時代の最後の頃は試合は全てバックハンドに回り込んで打つという状態でした。

 自分のイップスを考えると、人間には思考する自分と身体を支配する自分がいて、イップスというのは身体の自分がその動作を拒否している現象なのではないかと思います。思い切り心身二元論ですが。思考する自分がいくら頑張ろうと思っても精神を整えようとしても、頑なに身体の自分が拒否して別の動きをする。なので向精神薬もカウンセリングも思考する自分に対する対処法は効果がありません。身体の自分の言うことを聞いて、その動作を止めるしかないのではないかなと思います。もしかしたら脳の一部に障害を生じているのかもしれません。回復するのには数ヶ月単位とか数年単位とかかかる損傷なのかもしれませんが、修復することはするようです。焦ってみても仕方がないのかもしれません。

 軽いイップスであれば、フォームを変えてみるとか用具を変えてみるとかで何とかその競技を続けていくこともできると思いますが、重度のイップスでは自分の体ではないみたいに体が言うことを聞かないのでその競技自体がもう無理だと思います。まさにジストニアという状態です。

 イップスの体験者から見ると、運動以外でも様々なイップスが世の中にはあるんだなと思います。たとえば書痙は昔から医学書にも書かれていますが、あれは書字イップスという状態だと思います。一時新型うつ病と言われていた、仕事に行こうとすると鬱になるけれど仕事に行かなければ元気に遊んだり出来るというものは、その仕事に対するイップスなのかもしれません。

 イップスだとしたら、根本的にはいったん身体の自分が拒否していることからは離れるしかないと思います。大人なら、職務を変えるとか転職するとかいろいろな方法があるでしょう。しばらく労災で休職する方もいます。

 子供が学校に対してイップスになってしまったら、どんな方法があるのでしょうか。別に学校に行かなくても立派に大人にはなれるでしょう。その子にあった道を探していくことが親の役割なのかなと思うようになりました。そういう視点から子供の世界を見てみると、大人に許されている様々な手段が子供にはほとんど用意されていないことに気づきます。みんなと一緒に学校に通い、同じ勉強、同じ運動をして同じように進学を目指す。そこから逸れてしまうともう知らん。自分たちで勝手にせい。というのがこの国の方針のように思われてしまうほど親の心身は追い込まれるように思います。

 同じように一本道から逸れてしまった子供の居場所、成長する過程を作っていく作業をしていきたいなと思う今日この頃です。この近辺にはそういう場所はなかなか見当たらないのではないでしょうか。クラウドファンディングでもしたら、この近辺でもそういう場を立ち上げることができるでしょうか。もしかしたら相談できる小児精神専門医やカウンセラーを診療所に招いたら助かる親子も少なくないでしょうか。

 かなりエネルギーのいる作業かもしれませんが、前向きに思考回路を回していきたいと思います

2018年9月10日 (月)

橈骨頭骨折

 肘は肩側に上腕骨、手の方には橈骨と尺骨という二つの骨があり関節を形成しています。手をついて転倒したりした後に、痛みが軽くても曲げ伸ばしがしっかりできない場合は早めに医療機関を受診した方が安全です。
 肘の曲げ伸ばしが困難になる外傷にも様々ありますが、肘の外側の原因の一つに橈骨頭骨折や橈骨頚部骨折があります。この骨折は変形が少ない場合痛みはそれほどありません。特に大人では痛みが主訴ではないことが少なくありません。怪我をしてから数日から1週間もしてから肘が動かしづらいということで来院されることも少なくありません。
 レントゲンで「骨折ですね。」と話しても、骨は折れていないんじゃ無い?と不審がられることもあります。
 骨折での変位が強く完全にズレている場合は痛みも強くすぐに診断されやすく、手術的にネジ等で整復固定されたりします。場合によっては人工骨頭などに置き換えられる場合もあります。受傷して後日診断される場合には変位が小さい場合がほとんどです。骨折での変位が小さい場合は骨が安定するまでシーネ(副木)等で固定して経過観察をします。骨折と診断されず動かしていると徐々にズレてきて手術が必要になることもあるため注意が必要です。
 この骨折で来院される方は年間数人くらいですが、早いうちに診断できればほとんどの場合大きな問題なく治ります。
 
 

2018年8月21日 (火)

運動で痛めた方々

 世間では本当に様々な運動が紹介されています。人それぞれ色々試しているようですが、合わないことをすると逆に痛めることもあります。

 当院にご来院された実例からどんなことが起こりうるのか考えてみたいと思います。

 「介護予防リハをした後から腰背部痛が出た。」とのことで来院された方でレントゲン検査を行ったところ圧迫骨折だった、という事例があります。これは一人ではありません。整形外科医がレントゲンを見ると、こんな骨の薄い人に筋トレするのか…と恐ろしくなりますが、現状介護予防リハの事前チェックはありませんので防ぎようがないかもしれません。

 地域の体操に参加したら脇腹が痛くなったとのことで来院された方では肋骨骨折の方もいます。同じようにいきなり体幹を回す運動をしたら骨粗鬆症の方では折れる可能性があります。参加することは大変良いことなので、最初から張り切って思い切りやらず、恐る恐る軽い体操から始めてみた方がよいと思います。

 足を内外にスウィングして股関節を開排する機械が流行ったことがありました。開脚ストレッチというのが流行した時期ですが、この運動や機械で股関節が痛くなった方は多かったですね。股関節というのは、関節包や周囲の筋が硬くて開排できない場合とは別に関節や骨自体が張り出したり構造的に開排が無理な場合があります。構造的に可動域制限のある方がいくら運動して広げようとしてもインピンジメント症候群になってしまったりします。骨格的に大丈夫か考えてから行うか決めた方がよいと思います。

 最近は踵落とし運動というのもあります。これを始めたところ踵が痛くなったという方では足底筋膜炎という疾患を発症してしまった方もいます。いきなりガシガシ踵を落としていたら痛くなることもあり得るでしょう。足底筋膜炎は発症すると数ヶ月から半年、一年と痛いこともあり注意が必要です。これも最初はクッションのある靴やうち履きを履いて軽めに行ってみた方がよいかもしれません。

 ジムに通い始めてダンベルを重たくしたら肩が上がらなくなったという方で、腱板損傷や上腕二頭筋腱皮下断裂を生じた方もいます。肩はもともと腱板等が弱くなっていたり変性断裂している方も少なくありません。急にウエイトを上げずに、慎重に行った方がよいです。肩を上げすぎない位置で行うなどの工夫も必要かもしれません。

 ダイエットの為にジョギングを始めたら膝が痛くなったという方も少なくありません。過体重でいきなり走ったら膝が痛くなることは避けがたいかもしれません。ダイエットのためには、食事療法と運動療法をしっかり組み合わせることが大切だと思います。食事はそのままで走ってやせようというのは明らかに無理があります。運動するならまず間食を止めたり禁酒したりしてから行ってはどうでしょう。

 どんな運動にもリスクはあるものです。運動自体は何かしら行った方がよいと思いますが流行だからと行うのではなく、自分に向いている運動を取り入れて、何事も少しずつ向上するようにした方がよさそうです。

2018年8月 6日 (月)

忘れた頃に

 腰痛の方は整形外科外来に毎日たくさん来院されます。どれくらいの人数を診察してきたか分かりません。1日5人としても年1000人以上、1日10人くらいとしたら年2000人以上でしょうか。もっと多そうな気もしますが、どうでしょうか。

 腰痛も、明らかに運動不足の方から変形等が強くて根治的には治らない方、心因性の腰痛の方など様々です。一概に腰痛に対してはこうすれば良いと言うのはなかなか難しいものです。

 数多くの腰痛の方の診察をしていると、どうしても毎年必ず、悪性疾患による腰痛の方に出会います。癌の転移や血液疾患による腰痛等の方です。毎年、忘れかけた頃に悪性疾患を診断し、きちんと診断する必要性を再認識させられます。

 悪性疾患による腰痛も、初診時には普通の腰痛と区別することは困難なことが多いです。かなり長い間腰痛があり、改善することなく徐々に悪化し、安静時痛や夜間痛なども生じてきたという様ですと典型的な悪性疾患による腰痛の経過で、最初から癌の転移などを疑います。ただ、それほど典型的な場合は比較的少ない印象です。

 先週から腰痛を生じ、足がしびれてきたとのことで、ヘルニア等かな?と思いつつ腰椎X-Pを行ったところ悪性腫瘍による骨破壊と神経圧迫所見という場合もあったりします。転倒してから腰痛を生じ、レントゲンで圧迫骨折と診断し治療を開始して、なかなか良くならずMRIを行ってみると悪性腫瘍のある部位での圧迫骨折だったということもあります。

 急性腰痛でレッドフラッグがなければ最初はレントゲン検査は必要ない、という指針が出ていますが、脊椎の悪性腫瘍患者の64%にはレッドフラッグがなかったという報告もあります。そのまま経過を見るべきか。精査を行うべきか。なかなか難しいところです。

 千人に一人かもしれません。万人に一人かもしれません。腰痛の場合、悪性疾患の可能性について常に頭の片隅に置いて診療に当たっています。なるべく早くに診断と治療に繋げるために。それでも早期診断は難しいのですが。

2018年7月10日 (火)

自分のテニス肘

 先日剥離骨折した左小指は何とか完治しました。今度はどうやら自分がテニス肘になったようです。まあ、この年でボルダリング頑張ればなっても仕方がないかもしれませんね。最初は少し痛いかなくらいだったので用心していたのですが、だんだん痛みが増えてきました。といってもまだひどくはないのですが、シーネを大きな鋏で切る時などに肘の外側が痛いです。

 自分でなってみて実感するのですが、やはりテニス肘というのは指と手関節を伸展させる筋肉の肘側の起始部である腱部分の微細損傷が始まりのようですね。始まり頃からエコーで観察していますが、当初は軟骨側に不整な像?かと思っていましたが、最近は腱起始部に低信号領域がわずかに出現してきました。まだ病的な血流増加は見られませんが。

 さてどうしようかという話です。テニス肘に対しては、すぐに完治させるような治療法は現状ありません。最初は負荷を減らして、湿布をしたりして炎症を抑えるか、ストレッチやテニス肘用バンドなどをしてみるか。最近欧米ではPRP療法といって、患者さんから採血した血液の血小板を濃縮した成分を患部に注射するという治療が行われたりしています。

 PRP療法は日本では保険適応になっておらず、行うとしたら自費診療になりかなり高額なのですが、テニス肘に対するPRP療法は文献では劇的に効果が高いという印象はありません。費用的にそこまでする人が日本でどれくらいいるかな、という印象です。

 炎症が起こっていて痛みが強ければステロイド注射は短期的にはかなり有効です。ただ、ステロイド注射も長期的には根治的な治療ではないため、頻回に注射したりは避けた方がよいと思います。

 その他には体外衝撃波療法などもあり、最終的には手術療法もあります。さすがに手術は最終手段ではありますが、保存的な治療でどうしても改善しない場合は成績としては優位です。

 テニス肘もそうですが、腱の付着部障害というのは、肩の腱板損傷やアキレス腱障害、足底筋膜炎などもそうですがやはり年齢的な腱の変性が根本にあるものと思います。要は劣化ですね。微細損傷を生じると、その修復が順調に行われずに治るのに時間がかかるという面が強いようです。

なのでPRP療法も体外衝撃波も、修復過程を賦活化する治療が優勢になっています。

 エコーで見ながら患部に注射針を刺して出血を誘導するという治療(tendon fenestration)も実際に行われています。PRP療法のように濃縮はできませんが、出血とともに免疫細胞やサイトカイン等も患部に誘導されるため、治癒過程を活性化させようという治療です。鍼治療と同じようですが、鍼治療は出血等は狙っておらず、コンセプトが異なります。日本で行う医師はあまりいないかもしれませんが、試みて悪くないかもしれません。

 自分に対して、まずはテーピングとテニス肘用バンドはしてみました。やはり気持ち楽になるかなと思います。ボルダリングをする時にはテーピングとバンドを欠かさずしています。今の所それほどでもないので運動を休止する気にはなりませんが、さすがにレベルアップは目指さずしばらく現状維持を目標にしようかと思います。

 診療所で超音波治療器は当ててみています。最初は何にも感じないのですが当てているうちに痛いくらいの刺激ですね。しばらく試してみようと思います。それで改善傾向に乏しければ注射針を刺す治療(fenestration)を自分でしてみようかと思います。

 ここでやや疑問に思うのは、PRP療法も体外衝撃波も注射針刺入も炎症を敢えて起こす方向に誘導している訳で、それなら湿布や炎症止めは逆によくないのではないかということです。テニス肘にも微細損傷が主な病態と炎症を起こしている病態が混在しており、炎症を起こしている状態には対症療法として理にかなっているとは思いますが、どちらを優位に考えるかはその時の患部の状態で考えるべきかと思います。

2018年6月27日 (水)

むしさされ

以前も書きましたが、この季節はむしさされで腫れ上がったり、水疱ができたりする方が少なからず来院されます。
この状態になる方は市販のステロイドではランクが弱く、なかなか効きません。
また、しばらくして腫れがおさまったとしても、さされたところがしこりになり、掻いていると半年間かゆい皮疹がつづくことも結構あります。
むしさされで腫れ上がった場合は皮膚科を受診され、一番強いステロイドなどを1-2週間全くおさまるまで塗る必要があります。
最初が肝腎で、最初におちついてしまえばぶり返すことなく治癒します。
しかし、1ヶ月以上かゆみがつづいて来院された場合は一番強いステロイドを使っても治すのが困難な場合がしばしばあります。
むしさされで腫れ上がった場合は1週間以内に来院してください。

2018年6月25日 (月)

肘内障は何歳まで?

 肘内障というのは、幼少期に手を引っ張ったりして肘の部分で橈骨頭が外れてしまう疾患のことです。前腕には橈骨と尺骨の2本の骨が並んでおり、肘部分では主に尺骨が上腕骨と大きな関節を形成してます。橈骨頭は尺骨に輪状靱帯という靱帯で固定されていますが、幼少期にはこの構造が弱い(柔らかい)ので手を引っ張ったり、中には寝返りしたりした際に亜脱臼したり脱臼したりしてしまうことがあります。肘内障の注意点としては、転んだ後とかに痛みが出ていると骨折の可能性もあり、きちんと骨折や捻挫を除外診断することが大切です。

 この肘内障ですが、通常は2~4歳くらいの子供に多く、一部何回か再発する子もいますが小学校に上がる頃には靱帯等がしっかりしてきて外れることはなくなります。

 稀に小学生以上の子供に起こることもあります。小学校以上ですと整形外科医としても肘内障は念頭になく、捻挫や骨折を中心に考えがちです。「肘を痛めて救急病院を受診し、レントゲンを撮って特に大きな外傷はないと言われたけれどまだ肘が痛くて動かせない」という場合、肘に腫脹も皮下出血もなく純粋に屈曲などができない状態では肘内障も鑑別に入れる必要があります。

 論文では2000例以上の肘内障の症例を振り返ったところ最高齢で9歳だったという報告がありました。自分の経験では最高齢は12歳中学1年男子でした。バスケで手をついた時に右肘が痛くなり来院されました。腫脹なく、X-Pで骨傷なく、何かよく分からずいたのですが肘伸展軽度回内位でいたため診察として屈曲させてみたところコキッとクリックを生じて以後痛みも取れて動かせるようになりました。当時は超音波検査はなく、画像的に確認はできませんでしたがほぼ肘内障で間違いないと思います。10歳の子でやはり肘を痛めて救急病院を受診し、骨折はないと言われて来院された子の場合、伸展位で動かせず、肘外側に圧痛がありましたので最初から疑いました。今は超音波検査ができますので、肘内障の所見と周囲の損傷が確認できました。小学校以降の子供では純粋な肘内障ではなく、周辺の損傷を伴って亜脱臼位になっている可能性が低くないため、より慎重な評価が必要と思います。この子の場合は整復操作でクリックがあり超音波検査上輪状靱帯の位置は正常化しましたが周囲の腫脹と損傷がありましたのでシーネ固定にて経過観察とし、しばらくしてから軽快しました。なので診断としては肘内障状態を含む肘関節挫傷とするのが正しいでしょうか。

 肘内障は小学校以前と決めてかかると見落とすことがあります。稀ではありますが、腫れていない、動かさなければそれほど痛くない、などの場合小学生でも肘内障もあり得ます。肘内障は最初に整復すればすぐに治まりますが、整復されずに伸展位を長期に続けていると輪状靱帯が痛んできたりして整復も困難になってきますので注意が必要です。

2018年6月11日 (月)

COX1とCOX2

 従来鎮痛剤として最も使用されてきた消炎鎮痛剤(NSAIDS)は炎症反応を抑制することにより炎症を抑えて痛みを緩和します。炎症反応を抑制する経路のシクロオキシゲナーゼ(COX)を阻害するのが主な作用ですが、このCOXにはCOX1COX2の2種類が存在します。

 COX1は消化器、腎臓、血小板などに常に発現しており、臓器の恒常性維持に必要です。COX2は炎症などで誘導され、炎症を促進する物質などを合成します。

 なので、炎症止めの薬としてはCOX2のみを抑える薬が理想と考えられ各種COX2阻害薬が開発されましたが、COX2は血管拡張作用や血が固まるのを抑える作用があり、これを抑制してしまうと心血管系の副作用を生じる可能性があるため開発が中止されたものもあります。現在使用できるCOX2阻害薬ではセレコックスが有名です。

 COX1は消化器や腎臓の機能維持に必要なため、COX1を阻害してしまうと胃潰瘍や腎機能障害を生じます。なのでCOX1を抑制する作用は少ない方がよいと考えられています。COX1は血小板機能にも必要なため、COX1を阻害すると血が固まることが抑制されます。この作用を使って、いわゆる「血をサラサラにする薬」として使用されています。COX1選択性の強い薬としてはバファリン、バイアスピリンが有名です。

 腎臓に関してはCOX2も阻害する作用があるため一概にはCOX2が良いとは言えませんが、消化器障害に関してはCOX2選択性の強い薬剤の方が障害が少ないことが分かっています。

 COX1COX2の選択性は薬剤により様々で、どちらも抑制する物と抑制する比率が異なる物があります。医師としては胃の具合や心血管疾患の有無、腎機能等を鑑みて薬剤を選択しています。

 ここで「あれ?」と思っていただきたいのですが、現状整形外科で処方される痛み止めよりも内科や脳外科から「血をサラサラにする薬」として処方されている薬の方が胃に悪いというケースもあり得ます。

 実際バイアスピリンでもバファリンでも胃潰瘍等を生じることは分かっており、鎮痛剤とそれほど差はないはずなのですが、内科や脳外科から処方された薬で胃が痛いという方はあまりいない印象です。「整形外科からの薬は胃が痛くなるけれど、内科からの薬では胃は痛くならない」と思っている方も少なくないのではないかなと思います。「胃が弱いから痛み止めは飲めない。」という方は多いですが、お薬手帳を見るとバイアスピリンが長期で処方されている…ということもよくあります。

 消炎鎮痛剤は基本的に炎症を抑える作用なので、神経痛には効果は期待できません。あくまで炎症を伴った病態に使用するようになってきています。最近は神経痛用の薬など様々な鎮痛剤があり、整形外科からの鎮痛剤がすべて胃に悪い訳でもありませんが、なかなか風評というのは変えられないものです。

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