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心と体

2018年6月11日 (月)

COX1とCOX2

 従来鎮痛剤として最も使用されてきた消炎鎮痛剤(NSAIDS)は炎症反応を抑制することにより炎症を抑えて痛みを緩和します。炎症反応を抑制する経路のシクロオキシゲナーゼ(COX)を阻害するのが主な作用ですが、このCOXにはCOX1COX2の2種類が存在します。

 COX1は消化器、腎臓、血小板などに常に発現しており、臓器の恒常性維持に必要です。COX2は炎症などで誘導され、炎症を促進する物質などを合成します。

 なので、炎症止めの薬としてはCOX2のみを抑える薬が理想と考えられ各種COX2阻害薬が開発されましたが、COX2は血管拡張作用や血が固まるのを抑える作用があり、これを抑制してしまうと心血管系の副作用を生じる可能性があるため開発が中止されたものもあります。現在使用できるCOX2阻害薬ではセレコックスが有名です。

 COX1は消化器や腎臓の機能維持に必要なため、COX1を阻害してしまうと胃潰瘍や腎機能障害を生じます。なのでCOX1を抑制する作用は少ない方がよいと考えられています。COX1は血小板機能にも必要なため、COX1を阻害すると血が固まることが抑制されます。この作用を使って、いわゆる「血をサラサラにする薬」として使用されています。COX1選択性の強い薬としてはバファリン、バイアスピリンが有名です。

 腎臓に関してはCOX2も阻害する作用があるため一概にはCOX2が良いとは言えませんが、消化器障害に関してはCOX2選択性の強い薬剤の方が障害が少ないことが分かっています。

 COX1COX2の選択性は薬剤により様々で、どちらも抑制する物と抑制する比率が異なる物があります。医師としては胃の具合や心血管疾患の有無、腎機能等を鑑みて薬剤を選択しています。

 ここで「あれ?」と思っていただきたいのですが、現状整形外科で処方される痛み止めよりも内科や脳外科から「血をサラサラにする薬」として処方されている薬の方が胃に悪いというケースもあり得ます。

 実際バイアスピリンでもバファリンでも胃潰瘍等を生じることは分かっており、鎮痛剤とそれほど差はないはずなのですが、内科や脳外科から処方された薬で胃が痛いという方はあまりいない印象です。「整形外科からの薬は胃が痛くなるけれど、内科からの薬では胃は痛くならない」と思っている方も少なくないのではないかなと思います。「胃が弱いから痛み止めは飲めない。」という方は多いですが、お薬手帳を見るとバイアスピリンが長期で処方されている…ということもよくあります。

 消炎鎮痛剤は基本的に炎症を抑える作用なので、神経痛には効果は期待できません。あくまで炎症を伴った病態に使用するようになってきています。最近は神経痛用の薬など様々な鎮痛剤があり、整形外科からの鎮痛剤がすべて胃に悪い訳でもありませんが、なかなか風評というのは変えられないものです。

2018年5月30日 (水)

HMGCR抗体関連筋症

 脊椎疾患の中で診断・治療ともに難渋する疾患の一つに「頚下がり症候群」があります。文字通り首が前屈してきて、前を見られない程になってしまい日常生活動作が著しく障害されます。
 原因としては、整形外科的には高度の変形性脊椎症や頚椎のすべり症、頚椎の圧迫骨折で前屈することもあります。しかし、高度の頚下がり症候群の方はどうも整形外科的には説明困難な場合が多いように思います。
 脊椎疾患以外には、パーキンソン病やALSなどの神経疾患の一症状として頚椎が高度に前屈してしまうこともあります。そこで神経内科へ精査をお願いすることも少なくありませんが、四肢や嚥下など他の領域に障害がないと大抵はっきりした診断は付きません。
 脊椎疾患でも神経疾患でもない原因として、薬剤性の頚下がり症候群の例も報告されています。その一つにコレステロールを下げる薬やDPP-4阻害薬という糖尿病の薬などによる副作用があります。コレステロールを下げる薬では横紋筋融解症という筋疾患が有名です。この疾患では筋肉痛を生じたり力が入らない、だるいなどの症状を生じ、悪化すると壊れた筋肉の成分のために腎臓が障害されることもあるため注意が必要です。
 コレステロールを下げる薬による筋障害として、この薬剤に対する免疫反応が筋肉にも反応してしまうようになり免疫的に筋障害を生じるという疾患もあります。これがHMGCR抗体関連筋症です。この疾患でも体幹に近い筋肉が障害されることが多く筋痛や歩行障害を生じることもありますが、時に頚下がり症候群として発症する場合もあるようです。
 コレステロールを下げる薬による筋痛は内服している方の5%程度に生じるようです。コレステロールを下げる薬やDPP-4阻害薬という糖尿病の薬を飲んでいる方はため息が出るほど多いので、当院に通院している方の肩こりや腰痛でも年間何人かは薬の副作用による疼痛のはずです。大変申し訳ありませんが、現状薬剤性の肩こりや腰痛はなかなか診断できていないのが現実です。というのは肩こりや腰痛の方に片っ端から採血してCKという項目を検査する訳にもいかず、肩こりや腰痛の方に内科の薬を一時休止してみてくださいとも言いづらく、なかなか診断に至ることが難しいためです(といったら言い訳かもしれません)。
 HMGCR抗体関連筋症の注意すべきところは、現在はコレステロールを下げる薬を内服していなくても過去に内服していれば発症する可能性があるという点と、さらにもし薬剤性であっても、薬剤を止めても軽快しない可能性もあり、ステロイドや免疫抑制剤をその後長期に使用しないといけないかもしれない点です。ただし、この疾患でコレステロール内服歴のある方は6割程度で内服歴のない方も4割程度いるとのことですので完全に薬剤のせいとも言えない訳ですが、コレステロールの薬を内服していて筋肉痛や肩こりや腰痛に悩んでいる方は、CKという項目を採血してみる必要があるかと思います。または一応薬を休止することも考慮した方がよいかもしれません。
 HMGCR抗体関連筋症は整形外科では多くの方が見逃されていると思います。それはやはり筋痛や筋疾患で採血することの敷居が高いのが一番の原因だと思います。画像的には障害されている筋肉がMRIで高輝度になるため、エコーで観察すれば分かるかもしれません。実際エコーで横紋筋融解症を見つけたこともあるので、最近は筋痛の方も積極的に観察するようにしています。
 診療の時には内服中の薬剤も、これまで飲んだ薬剤も、本当は全て把握できるようにすべきかと思います。お薬手帳は必ず持参していただけるようお願いいたします。生活習慣病の薬は特に害はないと思っている方が多いと思います。必ずしもそうとも言えないのですが赤信号もみんなで渡れば怖くない的にみんな飲んでいるので不安感は少ないですよね。
 

2018年4月25日 (水)

はしかの流行について

3月下旬に外国人観光客により持ち込まれた麻疹(はしか)が沖縄で流行しています。さらには日本各地に流行が拡大しており、現在大流行への発展が心配されています。
 麻疹は非常に感染力の強いウイルスで、空気感染するため咳をしていない方からも感染してしまいます。インフルエンザより感染を防ぐことが難しく細心の注意が必要です。
 麻疹は潜伏期を経てまず発熱します。その後いったん熱が下がって再度発熱しその後特有の発疹が現れます。なので、最初に熱が出た時点では麻疹と診断することは困難です。
 麻疹は予防接種によって予防可能です。子供の時に予防接種を受けていればそれほど心配することはありません。また、高齢者は子供の頃に自然に罹患していることがほとんどのため、やはりそれほど心配することはありません。現在の感染も20前頃から40歳くらいまでの予防接種を受けていない方や1回接種の方が多く感染しています。
 このゴールデンウィークに沖縄へ旅行に行かれる方は、潜伏期が10~12日ですので、帰宅後発熱しないかどうか注意していただき、もし発熱したら人混みには出ないようにしましょう。
町田からも修学旅行に行くらしいので
 当院では予備診察室へ直接外から入ることができるようにしています。発熱のある方は、待合室に入ることなく事前に診療所に電話していただき、予備診察室にて診察から会計までさせていただけますと幸いです。

2018年3月 1日 (木)

花粉皮膚炎

とうとう花粉の季節がやってきました。
ふつうは鼻水、くしゃみ、眼のかゆみという症状で知られる花粉症ですが、皮膚科的には以前から花粉の接触による皮膚炎が認知されています。
しかし、鼻水、くしゃみの症状や眼の中のかゆみがなくて、皮膚のみかゆいという方も中にはいるようです。
眼の周りのかゆみに対して”花粉が関係していると思います”というと、”わたしは花粉症はありません”といわれてしまうのですが・・・
花粉が飛んでいるという時期に顔がかゆくなったり、頭がかゆくなったり、体全体がかゆくなる方は花粉皮膚炎の可能性があります。
外から帰ったら服を払い、できれば帽子やマスクをして花粉が皮膚につかないよう工夫するといいでしょう。
眼周囲が荒れる方は花粉眼鏡も有効です。
洗濯物は外に干さない方が良いと思います。
外から帰ったら、水で顔を洗うことをしてもいいと思います。

基本的に乾燥肌のバリア機能が落ちている方がなりますので、化粧をしていなければ、石鹸をつかわないで洗顔してください。
体もかゆいようなら石鹸をつかわないよう、バリアをこわさないように。
首などがかゆくなる方はシャンプーをやめるか、せめて低刺激のシャンプーにしてください。

それでも荒れがなおらないようなら早めに皮膚科を受診し、荒れている状態を早く正常化してさらなる花粉のアレルゲンが入らないようにした方がよいでしょう。

眼が荒れたまま放置すると、いずれ、目の周りに1ミリ以下の白いつぶつぶが多発する方もいます。稗粒腫です。
予防するためにも早めに対処してください。

2018年2月 9日 (金)

ささくれは引っ張らない。

 この時期、手が荒れている方が多いと思います。爪の脇にささくれができると思わず引っ張って取ってしまいたくなります。
 最近ささくれを引っ張って取った後にバイ菌が入って皮下膿瘍を生じて来院される方が多いです。皮膚科を受診される方が多いですが、当院では整形外科で麻酔下に切開排膿しています。
 ささくれを取ってから数日でだんだん痛くなり、最後には夜間痛で眠れなくなって翌日受診というパターンが多いですが、だんだん痛くなってきたらほぼ化膿しつつありますので早めに受診すると抗生剤の内服や穿刺のみで治るかもしれません。
 日頃指の腫れた患者さんを見ていると、指が腫れて夜眠れないのも辛そうですが指に麻酔するのも痛そうで、自分には極力されたくないと思いますので自分のささくれは絶対に引っ張らないようにしています。ささくれた部分の根元を細いはさみで丁寧に切るのが一番です。
 むやみに洗剤や石鹸で頻回に手を洗ったり消毒液を付けたりゴシゴシ擦ったりして手を荒らさないことも大切だと思います。

2018年1月26日 (金)

スマホネット依存の深刻度

 先日、WHOがネット依存を病気であると決めましたね。現在、ネットやスマホに依存する人が増加しています。かなり深刻な状況となっている場合もあり、社会生活に支障のある方も少なくない状況になりつつあります。
 現在のメディアには自律的精神が欠落しているので、自主的にネットゲームの宣伝を規制しようなどということには絶対にならないでしょうが、タバコの宣伝が制限されたように依存性のあるスマホやネット関連のコンテンツの宣伝や利用時間などをなるべく早く適切な範囲がどこにあるかを決めて対応しないと大変なことになると思います。
 ネット依存のスクリーニングをしているサイトもありますので(ここでもネットを利用することにはなってしまいますが…)、気づかないうちに深みにはまっていないかどうかチェックしてみるとよいかもしれません。
 時には旅行やキャンプなどに行って全くメールチェックすらしない時間を持つことは非常に大切なことだと思います。情報も新聞や本、雑誌、人々との交流からの伝聞などクラシカルな方法でも収集できなければ幼稚な発想になってしまいます。
 まずはネットやスマホがタバコや飲酒やギャンブルと同様にかなり深刻な依存症という病気を発症する原因だという認識をみんなが持つことが必要です。

2018年1月14日 (日)

保湿について

今は乾燥の季節です。皆さんはここかしこで保湿するようにと指導を受けたり、テレビなどの番組で聞いたりしていると思います。

でも、最初にやっていただきたいのは、やはり、石鹸をやめることではないでしょうか。
日本人はほぼ毎日入浴しています。お湯で流すとほとんどの汚れは落ちます。逆に言えば、お湯で落とせない汚れはほとんどないと思います。
石鹸を使ってしまうと、皮膚を保護している皮脂まで洗い流し、乾燥してしまいます。
加齢臭など気にする方がいますが、石鹸で落とせません。お湯で流した方が、むしろ皮膚にいる常在菌も正常に保てるため、臭いが出にくくなると思います。
加齢臭を落とすとうたわれている洗浄剤には殺菌剤もあり、かぶれたり、非常に皮膚があれたりするので、使わない方がいいと思います。
普通のシャンプーも洗浄力が強く、頭皮が乾燥したり、首から背中が乾燥して荒れたりしやすいので、理想はお湯シャン(シャンプーを使わずにお湯のみで髪を洗うこと)です。
最初はシャンプーしていたために体が過剰に皮脂をだして保護しようとしているせいか、べたつくという方もいらっしゃいますが、2,3週間たつと落ち着いてきます。
たいていは糖分の取りすぎやアルコール摂取や体質のせいですが、脂漏性皮膚炎のために頭が脂性肌になり、フケがでる方がいらっしゃいますが、この場合は低刺激のシャンプーや抗真菌剤を使う方がよい場合もありますが・・・
特になにもない方は将来荒れないためにもお湯シャンし、石鹸はやめてはいかがでしょうか。
風呂場に手桶のみ、江戸時代の風呂にするのです。
体があれない、髪があれないだけではなく、抜け毛が減るとおっしゃる方もいます。
1石3,4鳥です。
なぜなら、皮膚がすこやかになるだけでなく、シャンプー代、石鹸代もいらなくなります。お湯の使用料も減ります。石鹸、シャンプーがながれないため、地球も汚れず、下水処理のエネルギーも使いません。
実際、アトピーや乾燥肌でいらっしゃる患者さんほぼすべてに薦めて、すくなくとも体の石鹸をやめてにおいがでたりして困っている方は皆無で、保湿剤をぬらなくてすんだり、かゆみもなくなったりしています。わたしももちろん実践しています。

2017年12月10日 (日)

漢方で頻脈

 漢方というと、昔小学校の時に学校から帰ったら家の中から得体のしれない匂いがした時のことを思い出します。台所に行くと、そこが食べ物を扱う所とは到底思えない匂いに包まれていて、鍋の中に茶色い液体がクツクツと煮立っていました。こんな物飲めるのか?と思いましたが結局飲まされて、もう絶対続けられないと訴えて親を断念させたことがあります。

 今は漢方も粉になったりカプセルになったりして大変飲みやすくなって、西洋医学の医療機関でも広く使われています。

 漢方というと緩徐に効いて副作用などもないと思われている方が少なくないと思いますが、効果があるということは絶対に副作用もあるということです。逆に全然副作用がないということになったら効果も全くないということになると思います。

 整形外科領域では、足が攣る方によく芍薬甘草湯を処方します。これは定期処方では毎食前か毎食間に1日3回飲むことになっています。昔は1日3回飲んでいる方も少なくありませんでした。最近は、芍薬甘草湯をたくさん飲むと血圧が上がったり浮腫んできたりする副作用を生じることが少なくないことがわかってきました。芍薬甘草湯が体内にもともとあるアルドステロンという物質と同様の働きをするため、血液中のカリウム濃度が低下することが主な原因です。なので現在では足が攣った時に頓服するか、夜間に攣ってしまう方は就寝前に1回飲むか、運動や遠出した時などに内服するように必要最小限使うことが普通になっています。また、内服中は時々血液検査を行ってカリウムを中心にチェックすることが必須です。

 ところで、冬になると風邪を引いたりインフルエンザになった時にも漢方が使われることが少なくありません。有名なのは葛根湯と麻黄附子細辛湯でしょうか。簡単に言うと葛根湯は熱が出ている時、麻黄附子細辛湯は悪寒がして体を温めたい時に使います。

 この週末、少し喉が痛くて軽い風邪を引いてしまいました。少し寒い感じもしたので金曜日は早く寝たのですが、なんか動悸がして寝つきが悪く、風邪のせいかなと思っていました。土曜日はそのまま過ごし今日も少し体がだるかったので家でゆっくり過ごしました。夕食くらいになって、またどうも動悸がするなと思って脈を計ってみると90100くらいになっています。まあ、一時的な頻脈かなと思っていましたが、そのうち手指がなんかレイノー現象になった時にようにじりじり痛い感じになってきました。別に指が白くなったりしておらず、コタツに手を入れて様子を観ていました。指の症状が出て、そういえば金曜の夜と今日の夕方麻黄附子細辛湯を飲んだなと気が付きました。麻黄附子細辛湯には、交感神経を刺激するエフェドリンと同じような作用があります。麻黄の副作用として交感神経刺激症状が有名です。

 というわけで、まだ脈が100くらいあるのですが早々と布団に入って安静にしたいと思います。しばらく眠れそうもありませんが、漢方の作用が減弱してくるのを待つしかないかなと思います。

 風邪の症状は大した事なかったので薬は使わない方がよかったのかなと思いますが、自分で処方する薬のことをよく知るように、機会があればいろいろな薬を自分に使ってみたりしています。他にもいろいろ副作用を経験していますが、意外と体格が小さいからか副作用が出やすい体質みたいなので、気を付けないといけませんね。

2017年12月 6日 (水)

虫様筋損傷とクライミング

 恥ずかしいのでほぼ秘密ですが、最近ボルダリングをかじっています。近くにボルダリングジムができて以前から気になっていたのですが、肩関節痛も収まって動くようになったので子供と一緒に行ってみました。この年齢から本格的に上級を目指すのは無理そうですが、自分のペースでいつでもできて、子供の頃木登りや化石山で遊んだ感覚がして楽しいので趣味の一つにしようかなと思っています。
 クライミングとかボルダリングというと、整形外科医としては虫様筋損傷という疾患が頭に浮かびます。手の虫様筋というのは手のひらの奥にあり、指を屈曲する腱から始まり、指を伸展させる腱に付いている小さな筋肉です。通常筋肉というのは端が腱になって骨に付いていますが、この筋肉は腱から腱に渡っているような構造になっており、この筋肉が働くと指のDIP,PIP(第1,2)関節が伸展しMP(拳に相当する部分)関節が屈曲します。なので指で物を握ったりつまんだりする時に働きます。特に環指、小指の虫様筋は手のひらの奥では両隣の指の腱に橋渡しするように付いています。
 虫様筋損傷は、クライミングの上級者等が一つの指でぶら下がったりする時に虫様筋が隣の指との間で引き伸ばされるようになり損傷されます。特に環指、中指の虫様筋は橋渡しのようになっているため、中指か環指の1本でぶら下がるか、示指と中指の2本でぶら下がって環指は外すとその間で虫様筋が近位方向と遠位方向と別の方向に引き伸ばされて損傷されることが多いようです。典型的には受傷時にプチッとかビシッとかいう音を自覚して腫れてきますが、あまりポップ音は気付かない方もいます。この外傷は受傷機転から考えても、ほとんどがクライミングやボルダリングで生じるようです。私が診察した方も今のところクライミング関係の方のみです。
 治療としては、一つの指へ負担をかけることを避けて修復を待つ場合がほとんどです。損傷した虫様筋が引き伸ばされないよう隣同士の指をテープで固定するbuddy tapingをする場合もあります。文献上はやはり一つの指でのパフォーマンスがやや低下するとされていますが、大きな障害になることは少ない印象があります。
 自分も虫様筋損傷を起こすくらいのレベルまで頑張ってみたいと思いますが、一つの指で体を支えられるなどやはり超人ですよね。

2017年11月30日 (木)

1000兆vs60兆

 人間の消化管には、約100兆〜1000兆の常在菌が住み着いていると推計されているそうです。重さにすると1〜2kgにもなる常在菌がお腹の中にいることになります。人間の細胞は約60兆個と推計されているそうですから、人間の発明したブービー賞的な決定方法である多数決に従えば人体の与党は常在菌で、我々人類は野党でしかないのかもしれません。
 常在菌は消化管内のみではなく組織にも定住していることが分かっています。さらに消化管内以外にも体表や口腔内にも常に住み着いています。体表では、病原菌の侵入を防いだり乾燥を防いだりしている面もあるとのことです。
 人の免疫形成など様々な影響を与えていることも分かってきており、実は様々な病気も常在菌が関連しているのではないかということで研究が進んでいます。潰瘍性大腸炎などの消化器疾患はもちろん、生活習慣病やアレルギー疾患にも関与しているようです。パーキンソン病等の神経疾患にも関与している可能性が示唆されています。
 私の過敏性腸症候群も、食事を変えたことで劇的によくなりました。ほぼ40年罹患していたように思いますが、食事を変えたことでお腹の常在菌様が機嫌を直したせいかもしれません。ただ私の場合きちんと消化器内科専門医に確定診断していただいていないので、診断として食物アレルギーなど免疫反応だったのかもしれませんが。食べられない物が少なくないことはやや残念ですが、体調がよいということが一番です。
 なので、善良な常在菌様のご機嫌を損ねるような行為や治療は極力慎まないといけないと思います。暴飲暴食を控えることはもちろん、体質にあった食生活を送るように食材にも気を使うことで様々な病気が防げるかもしれません。現在は抗生物質の使用は一昔前に比べても大幅に減っていますが、一般社会では何でもかんでも殺菌除菌する風潮が氾濫しているのは正しいはずがないと思います。抗生剤の他にも、胃酸をずっと強力に抑制したりしてしまうようなことは腸内環境の変化から考えるとどうなのだろうかと思います。
 この常在菌の種類やバランスは民族ごとに異なっています。長い間の生活習慣や食習慣によって住み着いている常在菌が異なるのは当然ですが、とすると医学的な介入も民族ごとに別にする必要があるかもしれません。現状国際的な診断基準、標準的治療が推奨されていますが、アレンジが必要になるのはひとつには常在菌への反応によるのかもしれません。
 多剤耐性菌の問題なども考えると、我々人類は細菌を征服することはできません。うまく付き合っていくしかないのが現実です。というか、振られないよう怒らせないよう気をつけないといけない立場なのかもしれません。

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