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心と体

2018年1月14日 (日)

保湿について

今は乾燥の季節です。皆さんはここかしこで保湿するようにと指導を受けたり、テレビなどの番組で聞いたりしていると思います。

でも、最初にやっていただきたいのは、やはり、石鹸をやめることではないでしょうか。
日本人はほぼ毎日入浴しています。お湯で流すとほとんどの汚れは落ちます。逆に言えば、お湯で落とせない汚れはほとんどないと思います。
石鹸を使ってしまうと、皮膚を保護している皮脂まで洗い流し、乾燥してしまいます。
加齢臭など気にする方がいますが、石鹸で落とせません。お湯で流した方が、むしろ皮膚にいる常在菌も正常に保てるため、臭いが出にくくなると思います。
加齢臭を落とすとうたわれている洗浄剤には殺菌剤もあり、かぶれたり、非常に皮膚があれたりするので、使わない方がいいと思います。
普通のシャンプーも洗浄力が強く、頭皮が乾燥したり、首から背中が乾燥して荒れたりしやすいので、理想はお湯シャン(シャンプーを使わずにお湯のみで髪を洗うこと)です。
最初はシャンプーしていたために体が過剰に皮脂をだして保護しようとしているせいか、べたつくという方もいらっしゃいますが、2,3週間たつと落ち着いてきます。
たいていは糖分の取りすぎやアルコール摂取や体質のせいですが、脂漏性皮膚炎のために頭が脂性肌になり、フケがでる方がいらっしゃいますが、この場合は低刺激のシャンプーや抗真菌剤を使う方がよい場合もありますが・・・
特になにもない方は将来荒れないためにもお湯シャンし、石鹸はやめてはいかがでしょうか。
風呂場に手桶のみ、江戸時代の風呂にするのです。
体があれない、髪があれないだけではなく、抜け毛が減るとおっしゃる方もいます。
1石3,4鳥です。
なぜなら、皮膚がすこやかになるだけでなく、シャンプー代、石鹸代もいらなくなります。お湯の使用料も減ります。石鹸、シャンプーがながれないため、地球も汚れず、下水処理のエネルギーも使いません。
実際、アトピーや乾燥肌でいらっしゃる患者さんほぼすべてに薦めて、すくなくとも体の石鹸をやめてにおいがでたりして困っている方は皆無で、保湿剤をぬらなくてすんだり、かゆみもなくなったりしています。わたしももちろん実践しています。

2017年12月10日 (日)

漢方で頻脈

 漢方というと、昔小学校の時に学校から帰ったら家の中から得体のしれない匂いがした時のことを思い出します。台所に行くと、そこが食べ物を扱う所とは到底思えない匂いに包まれていて、鍋の中に茶色い液体がクツクツと煮立っていました。こんな物飲めるのか?と思いましたが結局飲まされて、もう絶対続けられないと訴えて親を断念させたことがあります。

 今は漢方も粉になったりカプセルになったりして大変飲みやすくなって、西洋医学の医療機関でも広く使われています。

 漢方というと緩徐に効いて副作用などもないと思われている方が少なくないと思いますが、効果があるということは絶対に副作用もあるということです。逆に全然副作用がないということになったら効果も全くないということになると思います。

 整形外科領域では、足が攣る方によく芍薬甘草湯を処方します。これは定期処方では毎食前か毎食間に1日3回飲むことになっています。昔は1日3回飲んでいる方も少なくありませんでした。最近は、芍薬甘草湯をたくさん飲むと血圧が上がったり浮腫んできたりする副作用を生じることが少なくないことがわかってきました。芍薬甘草湯が体内にもともとあるアルドステロンという物質と同様の働きをするため、血液中のカリウム濃度が低下することが主な原因です。なので現在では足が攣った時に頓服するか、夜間に攣ってしまう方は就寝前に1回飲むか、運動や遠出した時などに内服するように必要最小限使うことが普通になっています。また、内服中は時々血液検査を行ってカリウムを中心にチェックすることが必須です。

 ところで、冬になると風邪を引いたりインフルエンザになった時にも漢方が使われることが少なくありません。有名なのは葛根湯と麻黄附子細辛湯でしょうか。簡単に言うと葛根湯は熱が出ている時、麻黄附子細辛湯は悪寒がして体を温めたい時に使います。

 この週末、少し喉が痛くて軽い風邪を引いてしまいました。少し寒い感じもしたので金曜日は早く寝たのですが、なんか動悸がして寝つきが悪く、風邪のせいかなと思っていました。土曜日はそのまま過ごし今日も少し体がだるかったので家でゆっくり過ごしました。夕食くらいになって、またどうも動悸がするなと思って脈を計ってみると90100くらいになっています。まあ、一時的な頻脈かなと思っていましたが、そのうち手指がなんかレイノー現象になった時にようにじりじり痛い感じになってきました。別に指が白くなったりしておらず、コタツに手を入れて様子を観ていました。指の症状が出て、そういえば金曜の夜と今日の夕方麻黄附子細辛湯を飲んだなと気が付きました。麻黄附子細辛湯には、交感神経を刺激するエフェドリンと同じような作用があります。麻黄の副作用として交感神経刺激症状が有名です。

 というわけで、まだ脈が100くらいあるのですが早々と布団に入って安静にしたいと思います。しばらく眠れそうもありませんが、漢方の作用が減弱してくるのを待つしかないかなと思います。

 風邪の症状は大した事なかったので薬は使わない方がよかったのかなと思いますが、自分で処方する薬のことをよく知るように、機会があればいろいろな薬を自分に使ってみたりしています。他にもいろいろ副作用を経験していますが、意外と体格が小さいからか副作用が出やすい体質みたいなので、気を付けないといけませんね。

2017年12月 6日 (水)

虫様筋損傷とクライミング

 恥ずかしいのでほぼ秘密ですが、最近ボルダリングをかじっています。近くにボルダリングジムができて以前から気になっていたのですが、肩関節痛も収まって動くようになったので子供と一緒に行ってみました。この年齢から本格的に上級を目指すのは無理そうですが、自分のペースでいつでもできて、子供の頃木登りや化石山で遊んだ感覚がして楽しいので趣味の一つにしようかなと思っています。
 クライミングとかボルダリングというと、整形外科医としては虫様筋損傷という疾患が頭に浮かびます。手の虫様筋というのは手のひらの奥にあり、指を屈曲する腱から始まり、指を伸展させる腱に付いている小さな筋肉です。通常筋肉というのは端が腱になって骨に付いていますが、この筋肉は腱から腱に渡っているような構造になっており、この筋肉が働くと指のDIP,PIP(第1,2)関節が伸展しMP(拳に相当する部分)関節が屈曲します。なので指で物を握ったりつまんだりする時に働きます。特に環指、小指の虫様筋は手のひらの奥では両隣の指の腱に橋渡しするように付いています。
 虫様筋損傷は、クライミングの上級者等が一つの指でぶら下がったりする時に虫様筋が隣の指との間で引き伸ばされるようになり損傷されます。特に環指、中指の虫様筋は橋渡しのようになっているため、中指か環指の1本でぶら下がるか、示指と中指の2本でぶら下がって環指は外すとその間で虫様筋が近位方向と遠位方向と別の方向に引き伸ばされて損傷されることが多いようです。典型的には受傷時にプチッとかビシッとかいう音を自覚して腫れてきますが、あまりポップ音は気付かない方もいます。この外傷は受傷機転から考えても、ほとんどがクライミングやボルダリングで生じるようです。私が診察した方も今のところクライミング関係の方のみです。
 治療としては、一つの指へ負担をかけることを避けて修復を待つ場合がほとんどです。損傷した虫様筋が引き伸ばされないよう隣同士の指をテープで固定するbuddy tapingをする場合もあります。文献上はやはり一つの指でのパフォーマンスがやや低下するとされていますが、大きな障害になることは少ない印象があります。
 自分も虫様筋損傷を起こすくらいのレベルまで頑張ってみたいと思いますが、一つの指で体を支えられるなどやはり超人ですよね。

2017年11月30日 (木)

1000兆vs60兆

 人間の消化管には、約100兆〜1000兆の常在菌が住み着いていると推計されているそうです。重さにすると1〜2kgにもなる常在菌がお腹の中にいることになります。人間の細胞は約60兆個と推計されているそうですから、人間の発明したブービー賞的な決定方法である多数決に従えば人体の与党は常在菌で、我々人類は野党でしかないのかもしれません。
 常在菌は消化管内のみではなく組織にも定住していることが分かっています。さらに消化管内以外にも体表や口腔内にも常に住み着いています。体表では、病原菌の侵入を防いだり乾燥を防いだりしている面もあるとのことです。
 人の免疫形成など様々な影響を与えていることも分かってきており、実は様々な病気も常在菌が関連しているのではないかということで研究が進んでいます。潰瘍性大腸炎などの消化器疾患はもちろん、生活習慣病やアレルギー疾患にも関与しているようです。パーキンソン病等の神経疾患にも関与している可能性が示唆されています。
 私の過敏性腸症候群も、食事を変えたことで劇的によくなりました。ほぼ40年罹患していたように思いますが、食事を変えたことでお腹の常在菌様が機嫌を直したせいかもしれません。ただ私の場合きちんと消化器内科専門医に確定診断していただいていないので、診断として食物アレルギーなど免疫反応だったのかもしれませんが。食べられない物が少なくないことはやや残念ですが、体調がよいということが一番です。
 なので、善良な常在菌様のご機嫌を損ねるような行為や治療は極力慎まないといけないと思います。暴飲暴食を控えることはもちろん、体質にあった食生活を送るように食材にも気を使うことで様々な病気が防げるかもしれません。現在は抗生物質の使用は一昔前に比べても大幅に減っていますが、一般社会では何でもかんでも殺菌除菌する風潮が氾濫しているのは正しいはずがないと思います。抗生剤の他にも、胃酸をずっと強力に抑制したりしてしまうようなことは腸内環境の変化から考えるとどうなのだろうかと思います。
 この常在菌の種類やバランスは民族ごとに異なっています。長い間の生活習慣や食習慣によって住み着いている常在菌が異なるのは当然ですが、とすると医学的な介入も民族ごとに別にする必要があるかもしれません。現状国際的な診断基準、標準的治療が推奨されていますが、アレンジが必要になるのはひとつには常在菌への反応によるのかもしれません。
 多剤耐性菌の問題なども考えると、我々人類は細菌を征服することはできません。うまく付き合っていくしかないのが現実です。というか、振られないよう怒らせないよう気をつけないといけない立場なのかもしれません。

2017年10月28日 (土)

アメリカのオピオイド問題と賢明な日本

 なにやらトランプさんがアメリカでのオピオイド関連死亡を中国のせいにしていますね。オピオイド系の鎮痛剤というのは要するに麻薬系鎮痛剤のことですが、以前からアメリカでは麻薬系の鎮痛剤が乱用されてきました。アメリカでは手術後の痛みではもちろん、抜歯の時の痛みでも変形性膝関節症等の一般的な痛みに対しても安易に麻薬系の鎮痛剤が使われてきました。
 確かに麻薬系の鎮痛剤はあらゆる場面でよく効きます。脳の痛みを感じる部分をブロックしてしまう訳ですから、多くの痛みについて効くのは当然です。ここに、EBMという魔法をかけてしまうと、様々な疾患に適応承認が得られます。
 日本でも、今では腰痛や膝関節痛に麻薬系鎮痛剤を使うことが可能です。製薬会社が強力に国や医学会に働きかけて、適応を拡大してきました。我々専門医も、専門医を維持するための講演会で名医と言われる先生が「日本では麻薬系鎮痛剤の使用が少なすぎます。もっと使いましょう。」という話を嫌というほど聞かされています。
 確かにEBMによる治療をしている以上、効果が確実な薬剤ではあります。しかし、日本人の感覚としてオピオイドは極力使ってはいけない薬だと多くの臨床医は思っています。なのでもちろん日本でも必要最小限には使用しますが、なかなかアメリカのようにオピオイドが広まらないのが現状だと思います。1990年代頃から広まったEBM(根拠に基づいた医療)というものは、正論ではあるのですが鵜呑みにしてしまうとおかしなことになってしまいます。ポリファーマシーなども根本には専門医がEBMに従うと様々な薬を出さざるを得ない状況に陥るのが問題なのではないかと思います。EBMを基本に、それをうまく解釈できるかどうかが専門医と臨床医の違いなのかもしれません。
 アメリカ人がオピオイドの中毒になったり過量摂取で死亡したりする原因を中国のせいにするのはお門違いだと思います。どこの工場で作っているかではなく、どこの会社の製品を誰が処方しているのかを考えてみた方がよいと思います。アメリカ人の多くがオピオイドを通販で中国から自己購入している訳ではなく、医療機関で処方されているのでしょうから。

2017年10月20日 (金)

世界骨粗鬆症デー

 10/20は世界骨粗鬆症デーです。骨粗鬆症という病気をご存知の方は多いと思いますが、実際に治療されている割合は高血圧や脂質異常症と比べてまだまだ少ないと思います。
 データとしては、50歳以上の人が生涯骨折する確率は男性で1/5、女性では1/3と言われています。足の付け根である大腿骨近位を骨折すると、その後1年以内の死亡率は20%程度と言われています。つまり大腿骨近位の骨折の予後は癌の予後より悪い場合があるということです。また、足の付け根の骨折をすると、骨折後元の通りに歩けるようになる方は半分に満たないということが分かっています。
 自立した老後を維持し健康寿命を延ばすという点で言うと、骨粗鬆症の予防と治療は非常に重要だと思います。検診や健康フェアーで踵の骨強度等を測定して医療機関での精密検査を勧められたという方が時々来院されますが、手や踵での測定と腰椎・大腿骨での測定は結果が異なることも少なくないので注意が必要です。体幹部の骨粗鬆症と四肢の骨粗鬆症はややタイプが異なるのかな?と思うこともありますが、両方を検査してみるのが本当はよいのかもしれません。
 骨粗鬆症の方の慢性的な腰痛が、骨粗鬆症の治療を続けていると軽減することがあります。ただ、圧迫骨折を繰り返して腰が曲がってしまうとなかなか症状を取ることは難しいのが実情です。
 骨粗鬆症の治療は長期に薬を内服したり定期的に注射したりする必要があります。そこが嫌な方も少なくないと思いますが、診療所でもなるべく長期処方をしたりして負担が少なくなるように配慮していますので血圧の薬と同じくらい治療を継続すべき疾患のひとつだという認識になっていただけるとよいなと思います。

2017年10月16日 (月)

BMI27が最適と言われても

 先日フレイルについての講演会に行ってきました。フレイルというのは、もろさ、脆弱などを意味するfrailtyから作られた日本語の造語ですが、簡単に言うと、病気ではないまでも体力、気力、栄養状態等が低下している状態です。主に高齢者に用いられる言葉ですが、今までのようにとにもかくにも長く生きるということではなく健康寿命を重視しようということで生まれてきた言葉です。身体的なフレイル、心理的なフレイル、口腔機能のフレイル等さまざまな面から弱くなってくることを早めに気づき、運動をするとか栄養をしっかり摂るとか社会参加するとか自助努力をしていただきなるべく医療や介護に頼ることなく元気でいようという啓蒙活動です。
 最近の研究では、太り過ぎのみではなく痩せすぎもよくないということが分かっており、特に高齢になってからは栄養状態や筋肉を維持するためにも体重を維持した方がよいということになってきています。65歳以上に限定すると、BMI=27が最も平均余命が長いと話されていました。BMI27といったら日本人としてはかなり肥満に見えると思います。整形外科医としては、腰や膝は悪くてあまり歩けないけど元気に暮らしている方をイメージしてしまうのですが、何か寝たきりは防止できても座りきりになってしまうような感じがしないでもありません。
 中年期までは生活習慣病防止のために肥満を防止しましょうということには変わりありませんが、高齢になって目標BMIが違うというのもおかしな感じがします。BMIの高い方がそれを下げることが難しいように、BMIの低い方がそれを上げるのも難しいです。BMI27は実際としては日本人には高すぎると思いますが、BMIが20未満の方はなるべく健康的に増やす努力をした方がよいかもしれません。

2017年10月13日 (金)

ALSの早期

 ALS(筋萎縮性側索硬化症)という病気のことを聞いたことがあるかもしれません。この病気では運動神経ニューロンというところが障害され、基本的に体を動かす筋肉が動かなくなってしまいます。感覚の神経は保たれるのが特徴と言われています。
 進行すると全身の運動神経が障害されますが、徐々に進行するため早期には体の一部が動かしづらいという症状から始まります。
 大きく分けると、手足の一部が動かしづらかったり痙るような症状だったりする場合と、飲み込みづらいとか話しづらいなど喉周囲の症状から始まる場合があります。
 手足の一部が動かしづらい症状から始まった場合、最初に受診するのが整形外科である場合も少なくありません。中高年の方が手足の運動障害で来院された場合、どうしても頻度的に脊椎疾患と診断されやすいと思います。感覚障害がないことはヒントになりますが、脊柱管狭窄症でも感覚障害がほとんどない方もいますので超早期からALSと診断することは非常に困難です。特に脊椎のレントゲンやMRI検査で実際に狭窄が強い方の場合は狭窄症とALS早期の合併かALS単独の症状だったのかははっきりせず、狭窄症の手術を受けて改善しないことからALSの診断に至ることもあります。
 もしALSの早期であったとしたら、動かしづらさや筋力低下が徐々に進行します。筋肉が痩せてきたら早めに医師にも伝えるようにしていただけますと幸いです。特に、肩甲骨や肩関節周囲の筋肉の痩せは、洋服を脱いでみないと分かりませんので通常の頚椎の診察ですと気づかない恐れがあります。脊椎疾患でも筋肉が痩せる場合もあるため、それだけで診断できる訳でもありません。
 昔、交通事故の患者さんの初診時診察で男性でも女性でもパンツ1枚にして全身に外傷がないか確認していた上司がいました。本当にしっかり全身を診察しようとするとそれが一番確実なのでしょうが、今は胸部の聴診でも肌着の上からする時代なので、どの患者さんも裸で診察するというのは現実的ではありません。
 ALSの疑いがある場合は、神経内科の専門医への紹介が必要です。筋電図検査などを行い確定診断を得ることになります。
 最近高齢化のためか、神経疾患を診断する機会も増えてきたような印象があります。神経疾患はまず疑いを持つことが大切です。さらに詳細な深い診察をして早期診断ができるかどうかです。神経内科へ紹介しても早期ですと意見が分かれる場合もあります。早期診断が難しいことは理解していただき、心配や気づいた症状・所見があれば積極的に話していただくとよいなと思います。

2017年10月11日 (水)

トミージョン手術

 先週末は連休でしたが、日本肩関節学会に参加してきました。肩関節学会とは言っても、肘の話の方を中心に聴いてきましたが…。スポーツでの肘関節障害というと、内側側副靭帯損傷に対するトミージョン手術が有名ではないかなと思います。アメリカの専門医が来日して講演されていたので聴いてみました。
 アメリカのメジャーリーグでは、26%もの投手が肘の手術を受けているそうです。4人に1人は手術を受ける計算で、最近だとダルビッシュなど日本からメジャーに行った選手もかなりの確率で受けていますね。やはり復帰には1〜2年かかるとのことでダルビッシュが現在活躍できており本当によかったと思います。成績は比較的安定しており、投手で肘の内側に障害がある場合はやはり推奨される手術です。ひとつ、肘の障害後の復帰プログラムについて、遠投は初速がかなり上がり肘への負担は全力ピッチングと変わらなくなるので早期から遠投をするのは勧めないと話していました。
 テニスでの肩の障害は腱板損傷、SLAP、後方障害などについての講演がありました。なかなかすぐに治る疾患ではないのですが、手術適応も未だに議論があるところです。リハビリなどの保存療法で改善が乏しい場合は手術の適否についても検討が必要かと思います。
 少年野球の野球肘について外側の離断性骨軟骨炎については膝の軟骨柱を移植する手術の講演を聞きましたが、いろいろ工夫されて成績はかなり安定しているようでした。ただ、やはりできれば早期に診断して保存的に経過観察すればかなりの確率で手術は避けられる訳で、少年野球選手が肘に疼痛や可動域制限を生じた場合は我慢せずに医療機関での診断が必要です。
 肩や肘の障害では、我慢して我慢して診断や治療が後手後手に回るとしっかり治せなくなってしまうこともあり、早期からしっかり診断し休むべき時にはしっかり休む、治療は科学的医学的に治る確率の高い方法を選択するという理性的な対応が大切ではないかと思います。

2017年10月 7日 (土)

パンコースト腫瘍

 肩こりと言うと医学的には肩の疾患より頚椎から肩甲帯の疾患を考えますが、特に上肢や手指にしびれや放散痛を伴っている場合、整形外科的には頚椎疾患を一番に考えます。年齢的に頚椎がすり減っていたり変形していると、頚椎症性神経根症や頚椎椎間板ヘルニアなどの可能性が最も高いです。その他の可能性としては、胸郭出口症候群や末梢神経疾患、上肢動脈疾患などの鑑別が必要です。
 頚椎のレントゲンを見る時に、整形外科医がまず最初に見る部位というのは頚椎自体ではなく肺尖部と呼ばれる肺の上端です(「そんなことねーよ」と同業者には言われそうですが)。ごく稀に、肺尖部に腫瘍があって上肢へしびれや痛みを生じていることがあります。このような腫瘍をパンコースト腫瘍と言います。もちろん上肢の症状があれば鑑別診断の一つに挙がるのですが、頻度は稀で、早期診断をするのは非常に難しいと思います。
 早期ですと頚椎のレントゲンでは見えないことも少なくありません。頚椎疾患を中心に考えている場合は次に頚椎のMRIを行いますが、頚椎MRIでも撮像範囲に入っていないこともあります。
咳や痰、息切れなどの症状があれば診断に近づきますが、パンコースト腫瘍の場合は内科的な症状は出ないことも少なくありません。
 診断に至る過程としては、徐々に上肢の症状が増悪する場合、夜間痛など安静時痛もある、上胸部や肩甲骨方向へ疼痛範囲が広がる、体重減少や体調不良なども生じてくる、頚椎の所見と神経のレベルが合わないなど、頚椎の疾患にしては非典型的になってきて、頚椎レントゲンを間隔をあけて撮り直すか、胸部レントゲンやCTを追加するかなどして発見されるというようになることが多いです。整形外科で診断できる前に検診の胸部レントゲンで発見されるという場合もあり、この場合見落としではないかと思われるとは思いますが、早期に診断できた場合の方が奇跡に近いと思います。
 腫瘍性疾患の症状の特徴としては、しびれや痛みが一時的に軽快するようなことなく徐々に増悪していくことが多いです。上肢のしびれや肩こりなどが徐々に増悪する場合、頚部や腋窩も含めて腫瘍による症状のことも考慮する必要があります。

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